Vitaminもの

□キミのためのテキスト
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ふと視線を感じて、教材から顔を上げる。
彼と目があい、にっこりと太陽のような笑顔が向けられた。

「どうかしました?」

向けられた笑顔が嬉しくて、自然と笑顔になる。

「ん〜、何でもないよ!ちょっとみてただけ」
「そう?」
「うん」

もう一度教材に目を戻す…けど、やっぱり気になる視線。
顔をあげるとやっぱり正輝くんがこっちを見ていた。
視線があうと、やっぱり笑顔を向けてくれる。

「何か気になります?」
「えっ…いや…あ、ほら。その教材、どうかな〜って思って!」
「これですか?凄く良いと思います。思わず読み耽っちゃって」
「それなら良かった!役に立てたんだったら俺も嬉しいし…もし良かったら持って帰りなよ。返すのはいつでもいいし」
「本当ですか?ありがとうございます!」
「…〜っ!」

突然、唇にふわりとした感触。目の前には正輝くんの顔があった。

「…あ、の」
「…反則だよ、今の顔…」

教材を抱いていたはずなのに、今の私は正輝くんの腕の中。

「…本当はさ、教材がどうとか〜じゃなくて、悠里ちゃんに見とれてた。すごい真剣に読んでて、すごい綺麗だった」
「…ま、さき…くん?」
「でもさ、その…せっかくうちに来てくれたのに、読んでばっかりで寂しかった…」
「…ごめん、なさい…」

耳が、すごくあつい。
ぎゅうぎゅうと私を抱き締めて話す正輝くんが見れない。

「いや、悠里ちゃんは悪くなくて…俺がガキっぽいってゆーか……〜ごめん!」
「あっ…」

そう言って離れた正輝くんの手を咄嗟に掴んでいた。

「あの…ごめんなさい、つい夢中で読んじゃって」
「いや、こっちこそ…邪魔してごめん…」

借りた教材は横に置いた。でも掴んだ手は離さない。

「ゆ、悠里ちゃん?」
「待たせちゃって…ごめんなさい…!」

謝った瞬間、掴んでいたはずの手はいつの間にか抜けて、また抱き締められていた。

「ごめん悠里ちゃん…大好き、すごく大好き。一緒にいてくれてありがとう…」
今度はゆっくり、正輝くんの顔が近付いてくる。
私も大好きだよ、と思いながら目を閉じた。



(キミのための手、キスと…)

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