Vitaminもの
□ドアスコープ
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「わぁ…寒いですね」
「冬だからね。風邪を引かないように気をつけないと」
「うっ…気をつけます」
「でもその分、冬は星が綺麗に見えるんだよ」
「あ、それ聞いたことあります」
「まぁ、流石にこの辺りではあんまり綺麗に見えないけれどね」
「確かに。山とかなら良く見えそうですね」
学校からの帰り、二人で帰る時間。
吐き出す息は白くて、思わず首をすくめてしまった。
「そうだね。でも、こんな寒がりな恋人を冬の山に連れてはいけないかな」
「わっ」
ふわり、と首元に暖かい何かがかかった。それと同時に、鼻をくすぐる恋人の香り。
「あの、これ返します。鳳先生が寒くなっちゃいますよ」
「私としては、君が寒いほうが困るかな」
「でも…」
「いいから、着けていて?車に戻ったら外してもいいから」
その代わり、ほら。
鳳先生の手と私の手が繋がって、指が絡まる。
そのまま二人の手は鳳先生のコートのポケットに入った。
「こうしていれば、どっちも暖かいからね」
いたずらっぽく笑うその顔は、少しだけ見えた幼い感じの表情だ。
付き合い始めてから、いつも家まで車で送ってくれる鳳先生には悪いけれど、このまま星空の下を二人で歩いて帰りたいな、なんて思ってしまった。
「……あ」
良いことを思いついた。いや、良いものか。
「どうかした?」
「あ、いえ、なんでもないです!」
危うく口を滑らせてしまうところだった。気をつけないと…
「もしかして、さっきの悩み事かな?」
「!」
このタイミングでバレましたか!?
思わず逃げ出そうとした…が、手はしっかりと握られている。逃げ道は無し。
「えと、はい。そうです。でもおかげさまで解決しました!」
「そう?」
「はい!」
思い立ったら吉日。だけどこの時間ではお店は開いていないから、明日の朝一番で買いに行こう。