短文
□歪んだ鏡の姿
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響いた爆音。
舞う砂埃。
一護は、ただ仲間らの背、さらに後ろで、ただ座りこんで見つめていた。
今の一護は、囚人のような純白の、死神の力を喪失したことを現す着物一枚だけだ。
由嶌の禍々しい霊圧も、必死に戦う仲間の霊圧も、今の一護にはただ苦しめるだけのものだった。
織姫の盾が無ければ、今ごろ一護は意識を失うどころか、命に影響している。
「…………………」
一護は砂埃の先を、ただ見つめる。
晴れた先には、由嶌が力尽き、倒れている。
それを見つめる、仲間。
「………………」
一護は仲間の背を見つめ、唇を噛んだ。
皆、ボロボロで戦った。
本来なら一護もそこに居なければなならいのに…。
一護は悔しさに、情けなさにただ唇を噛んだ。
「…………………」
…
……
………
望美を融合させた由嶌だったが、望美は決して由嶌に従うことはなかった。
望美はただ残った力で由嶌に抵抗し、こうして由嶌を敗北、という結末へと導いた。
「ふざ…けるな…」
由嶌は、地に這いつくばるという屈辱的な己の姿に、ただ呪うかのように言葉を吐いた。
「…ふざ…けるな……ふざけるな……ふざけるな」
そんな由嶌に、ルキアは近づく。
もはやルキアも限界に近い。始解もできない刀を、それでも構えた。
望美を開放するには、鎖結を砕くしかない。
ルキアは、刀の切っ先を由嶌に向ける。
「終わりだ…」
ルキアが呟いた時、
世界が黒に染まった──…
…
……
………
一護には、何が起こったのか分からなかった。
世界が黒に染まり、辺りに響いたのは爆音。
仲間の悲鳴がこだました。
「………っ……」
気がつけば、一護は地に倒れていて、自分が最初に居た場所よりも遠く、吹き飛ばされていた。
「なに…が…」
「うっ…」
近くには、同じように倒れているルキア。
一護は痛む身体を起こし、ルキアを抱き上げる。
「ルキア…!」
「…っ……一…護…」
「ルキアっ…」
見渡せば、仲間たちが倒れている。
あれは由嶌の仕業か。
まだ、あんな力を。
「…くくく…ははは…」
だが、由嶌は倒れたまま。ただ、笑っていた。
「…どうやら、……間に合った…ようだな…」
「…何…を…」
一護が、笑い立ち上がる由嶌を見つめた時、
それは一護の前に現れた。
「……え…──」
まるで鏡のよう、自分がいた。
「なん…で…」
自分はただ、自分を見下ろしていた。
「なんで…」
「………………」
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