短文

□歪んだ鏡の姿
1ページ/3ページ





響いた爆音。


舞う砂埃。



一護は、ただ仲間らの背、さらに後ろで、ただ座りこんで見つめていた。


今の一護は、囚人のような純白の、死神の力を喪失したことを現す着物一枚だけだ。



由嶌の禍々しい霊圧も、必死に戦う仲間の霊圧も、今の一護にはただ苦しめるだけのものだった。

織姫の盾が無ければ、今ごろ一護は意識を失うどころか、命に影響している。



「…………………」


一護は砂埃の先を、ただ見つめる。


晴れた先には、由嶌が力尽き、倒れている。

それを見つめる、仲間。


「………………」


一護は仲間の背を見つめ、唇を噛んだ。


皆、ボロボロで戦った。

本来なら一護もそこに居なければなならいのに…。



一護は悔しさに、情けなさにただ唇を噛んだ。


「…………………」











……
………



望美を融合させた由嶌だったが、望美は決して由嶌に従うことはなかった。


望美はただ残った力で由嶌に抵抗し、こうして由嶌を敗北、という結末へと導いた。


「ふざ…けるな…」


由嶌は、地に這いつくばるという屈辱的な己の姿に、ただ呪うかのように言葉を吐いた。


「…ふざ…けるな……ふざけるな……ふざけるな」


そんな由嶌に、ルキアは近づく。


もはやルキアも限界に近い。始解もできない刀を、それでも構えた。


望美を開放するには、鎖結を砕くしかない。

ルキアは、刀の切っ先を由嶌に向ける。


「終わりだ…」


ルキアが呟いた時、

世界が黒に染まった──…












……
………



一護には、何が起こったのか分からなかった。


世界が黒に染まり、辺りに響いたのは爆音。


仲間の悲鳴がこだました。



「………っ……」


気がつけば、一護は地に倒れていて、自分が最初に居た場所よりも遠く、吹き飛ばされていた。


「なに…が…」

「うっ…」


近くには、同じように倒れているルキア。

一護は痛む身体を起こし、ルキアを抱き上げる。


「ルキア…!」

「…っ……一…護…」

「ルキアっ…」


見渡せば、仲間たちが倒れている。


あれは由嶌の仕業か。

まだ、あんな力を。


「…くくく…ははは…」


だが、由嶌は倒れたまま。ただ、笑っていた。


「…どうやら、……間に合った…ようだな…」

「…何…を…」


一護が、笑い立ち上がる由嶌を見つめた時、

それは一護の前に現れた。



「……え…──」


まるで鏡のよう、自分がいた。


「なん…で…」


自分はただ、自分を見下ろしていた。


「なんで…」

「………………」





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ