妖怪の涙

□3.鴆
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紅が奴良家に居候しにきた翌日








「あら!アンタ何してんの!?」



毛倡妓は一時離れていた台所へ戻ってきて驚きの声を上げた





そこにいたのは五歳ほどの少年

少年は盆に茶を乗せてどこかに行こうとしていた様子






「こんにちわ、毛倡妓殿


主の起床がありますので、勝手ながらも御台所を貸していただきました

すみません」




ペコリと頭を下げる少年に毛倡妓はポカンとほうけ顔




そんな毛倡妓の横を通り過ぎようとしていた少年に、意識を取り戻した毛倡妓は急いで少年を捕まえた





「ちょ、ちょっと待ちなさい!

アンタ、どこの子なの!?」



「え?


け、毛倡妓殿??」




目を真ん丸にする少年に毛倡妓はずいっと詰め寄る





「見ない顔ね・・・」



「あ、あの、毛倡妓殿


何を勘違いされているのですか?」





「何がよ?」




少年は困ったと言わんばかりに眦を下げて少し身を引いた







「毛倡妓殿

オレは紅様のお供の幻です」




「へ・・・・・?」





毛倡妓は間抜けな声を出したかと思うや否やガシリと少年、幻の両頬を固定した





「幻ってあの紅様にくっついてた子狐!?


え、アンタ、人間になれたの??」




「はい、オレは化け狐ですから」







苦笑しながら答える幻に毛倡妓はホォと感心したように息をついた







「さすが紅様の舎弟ねぇ」



「お褒めの言葉ありがとうございます


では、先を急ぎますので・・・・ってアレ?」





「?」





幻は急いで紅の元に行こうとして動きを止めた






毛倡妓はそんな幻の視線を追う





「あれ?


確かあの人は・・・鴆一派の鴆(ぜん)様?」



「・・・・・・紅様の部屋に向かっている」






幻はそう呟くと急いで走りだしてしまいその場に毛倡妓だけがポツリと残された











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