コンビネーション!
□ビニール傘越し
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部室で和深とわかれ、折りたたみ傘をさしながら駐輪場に走った。
カッパは自転車の前籠に入れてある。
傘さし運転なんてしようものなら厳格な祖父に殴り飛ばされるだけでは済まないだろう。
ささっとカッパを着込み、鞄にビニール袋を被せた。
前籠に突っ込み、鍵をポケットから取り出し、鍵穴に突っ込んだ。
準備OK。
自転車には乗らず、校門に向かって歩き出した。
*
校門からしばらく進んだ。
雨は降り続き、辺りはもう薄暗い。
自転車のライトは勝手に点灯している。
周りの街灯を頼りに、緩やかなカーブを進んでいく。
そのカーブの終わりかけ。
地面近くにビニール傘。
傘越しにみえる綺麗な赤い長髪。
「水鳥…?」
見知った姿。
こんな所でなにを…?
「和音じゃねーか。
そっか、帰り道こっちか。」
和深の部屋に…和音の部屋でもあるが、遊びに来たことがある。
そのときは茜と共に歩いてきたらしい。
流石に帰りはバスを使ったと苦笑いをしていた。
「こんな雨の中なにやってるの?」
核心をつくような発言。
こんな肌寒い雨の日は早めに家に帰るのがベストだろう。
「こいつ。」
水鳥が少し身を動かすと、ダンボール箱がみえた。
小さな子猫と一緒に。
「こんな雨の中可哀想だけど、うちじゃ飼えないんだ。
だから、せめて傘だけでもって。」
若干子猫に傘を傾けているため、髪先が濡れていた。
「じゃあオレの傘をこいつにあげようか。
オレカッパ着てるし、水鳥が傘を置いてったら水鳥が濡れるだろ?」
自転車から折り、前籠に入っている折りたたみ傘を広げた。
それをダンボール箱の、子猫が濡れないように傾けて置いた。
「傘、いいのか?」
「いいんだ。
別に和深とお揃いとかじゃないし。」
和深とお揃いだったらそう簡単には置いていかなかっただろう。
「帰ろうか。
水鳥、家どこらへん?
よかったら送るよ、こんな暗いんじゃ心配だし。」
男勝りだが、水鳥は女。
ここで水鳥を置いて一人で帰ったら、後悔するだろう。
「いいよ、別に。
お前みたいなヘタレに送ってもらうほどあたしは弱くないよ。」
「ヘタ…!?
水鳥マジひでえ…一応気にしてたのに…」
自分は些か女々しすぎるのではないか。
和深といるときは余り感じないが、一人でいるときはどうも…。
「いいよ勝手に付いていくから。
独りでなんて帰らせない。」
歩き出す水鳥の後ろを自転車から降りて歩き出した。
「お前、優しいんだな。」
ビニール傘越しにみえた微笑み
(え、マジ?
オレって優しい?)
(前言撤回。
やっぱりお前はヘタレだ。)
(ひでぇ…)