コンビネーション!

□濡れた髪の先
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「雨、降りそうだね…」

ふと空を見上げた。

たしか今日は夕方雨が降ると天気予報でいっていた。

折り畳みではない長い傘を部室に一本置いてあるので突然の雨にも対応できる。

「和深、今日は雨っぽいからバスで帰れよ?」

雨が降っているのにわざわざ長い距離を歩く必要はない。

雨にも濡れず、快適なバスで帰った方が風邪も引かないだろう。

「え、でも和音…」

「大丈夫だって、カッパあるし。
和深が濡れる方が嫌なんだ。」

同じくらいの身長なのに、頭をポンと叩いた。

「あれ、和音背伸びた…?」

いつもより少し大きな気がする。

この前までは同じくらいだった気もするのに…

「成長期だからかな!」

「そっか、なんか寂しいなぁ…」

急に遠くに行ってしまうような感覚。

ずっと二人でおんなじ姿と思ってたのに。

「そんな顔すんなって!
ほら、練習続けるぞ!」

肩を叩き、ボールを蹴った。



【サーー…】

とうとう降ってきた雨。

バスに乗るためにバス停に一人佇む和深。

もうすぐバスが来る時間だ。

一人でいる時間は久しぶり。

いつも近くには和音がいたし、クラスでは水鳥や茜も一緒。

寂しく感じるのは、雨のせいなのかもしれない。

降り注ぐ雨の中、二つの灯りが近付いてくる。

バスがきた。

降りる人はいない。

近くには雷門中しかないからだ。

並んでいるのは和深だけ。

定期をみせ、バスに乗り込む。

「待ってくれー!」

声が聞こえた。

この声は…

「三国さん!?」

扉が閉まるギリギリの所だった。

「三国さんっていつも自転車でしたよね?」

和音の自転車の隣に止めてあったはず。

「カッパ持ってくんの忘れちまってな。
傘もないし、最終手段ってわけだ。」

幸い三国の家の近くにバス停がある。

「それで…
あたしも、今日は和音と別々なんです。
寂しい気がしてたんで…助かりました。」

この胸の寂しさを紛らわすことができる。

「ん、まあな。
和深、寒いのか?」

少し日に焼けた肌にみえるのは鳥肌。

寒いのかもしれない。

「少しだけ…半袖だと辛いかなぁ…」

雨のせいか少し冷える。

羽織るものもなにもない。

「羽織れよ。」

学ランを脱ぎ、肩にかけてあげた。

思ったよりもずっと大きく、暖かかった。


濡れた髪の先、触れた温もり


(三国さん、これ濡れてます…)

(わっ悪い!)

(でもあったかいです。
ありがとうございます、三国さん。)

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