コンビネーション!
□よわね
1ページ/1ページ
保健室。
一番奥のベッドにはカーテンがかかっている。
「落ち着いたか、和深。」
入ってきたのは三国。
制服に着替え、自分の荷物と共に和深の着替えと荷物も一緒に持っていた。
「大丈夫っていったじゃないですか…
慣れてるんで、平気です。」
環境が環境なためか精神的に不安定になりやすく、よく頭痛を訴える和深。
一軍にあがってからはそれ程酷くはなかったが、フィフスセクターに逆らって自由なサッカーを続けると決めたことや、剣城や一年からうけるプレッシャー。
それらが焦りとなり、無意識のうちに無理をしていた。
「なにかあってからじゃな。
和深はうちの大切なストライカーだからな。」
その一言で何かが壊れた。
「あたしは…ストライカーなんかじゃないっ!!」
手元にあった枕を三国に力一杯投げた。
「一度も試合に出たことないストライカーなんてチームにいらない…
シュートの決まらないストライカーなんて…チームにいる意味なんてない…!!」
ぼろぼろと、目尻から涙が零れ落ちる。
日頃の鬱憤と共に。
「あたしも…二軍のみんなと一緒に辞めた方がよかったのかな…
それとも、マネージャーになればよかったのかな…
ねえ三国さん、あたし…このままサッカー部にいてもいいのかな…」
もう頑張れない。
そう瞳で訴えている。
赤く充血した兎のような瞳はなんとも悲しげで、どこか美しかった。
「いいんだよ、いたって。
和深はサッカーがやりたいんだろ?
一軍にあがりたての頃は俺だって試合に出してもらえなかった。
和深は和深のペースで頑張れ、それでも無理なら辞めたって構わない。
和深がそんなに苦しいなら、続けなくたっていい。」
ポケットからハンカチを取り出し、差し出した。
「三国さん…ごめんなさい…あたし…」
「弱音、吐いたっていいんだ。
疲れたら休んだっていいんだ。
和音に頼ってもいいし、神童や霧野、色んなやつを頼ればいい。
俺にも頼っていいんだぞ、たった一年だけど先輩だし。」
頼ってほしい。
小学生の頃からの知り合いだし、同じ部活の先輩後輩どうし。
それにこの胸のどきどき…
「三国さん…、頼っていいんですか?
あたし…すごく迷惑かけます…
抜けた南沢さんの穴埋めも出来ない、剣城の代わりも出来ない…」
必殺技だって、神童のフォルテシモに比べたらまだまだ…
「和深は和深のままでいいんだ。
和深がほかの誰かになる必要なんてない。」
ぽんぽんと頭を撫でる。
するとどんどん和深の顔が赤くなった。
よわね、涙と一緒に吐き出した
(そんなに何回も名前を呼ばないでください…照れます…)
(そんなに呼んでるか?)
(無意識ですか…)
和深が公式戦初出場を果たしたのはその数日後のこと。