コンビネーション!

□よわね
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保健室。

一番奥のベッドにはカーテンがかかっている。

「落ち着いたか、和深。」

入ってきたのは三国。

制服に着替え、自分の荷物と共に和深の着替えと荷物も一緒に持っていた。

「大丈夫っていったじゃないですか…
慣れてるんで、平気です。」

環境が環境なためか精神的に不安定になりやすく、よく頭痛を訴える和深。

一軍にあがってからはそれ程酷くはなかったが、フィフスセクターに逆らって自由なサッカーを続けると決めたことや、剣城や一年からうけるプレッシャー。

それらが焦りとなり、無意識のうちに無理をしていた。

「なにかあってからじゃな。
和深はうちの大切なストライカーだからな。」

その一言で何かが壊れた。

「あたしは…ストライカーなんかじゃないっ!!」

手元にあった枕を三国に力一杯投げた。

「一度も試合に出たことないストライカーなんてチームにいらない…
シュートの決まらないストライカーなんて…チームにいる意味なんてない…!!」

ぼろぼろと、目尻から涙が零れ落ちる。

日頃の鬱憤と共に。

「あたしも…二軍のみんなと一緒に辞めた方がよかったのかな…
それとも、マネージャーになればよかったのかな…
ねえ三国さん、あたし…このままサッカー部にいてもいいのかな…」

もう頑張れない。

そう瞳で訴えている。

赤く充血した兎のような瞳はなんとも悲しげで、どこか美しかった。

「いいんだよ、いたって。
和深はサッカーがやりたいんだろ?
一軍にあがりたての頃は俺だって試合に出してもらえなかった。
和深は和深のペースで頑張れ、それでも無理なら辞めたって構わない。
和深がそんなに苦しいなら、続けなくたっていい。」

ポケットからハンカチを取り出し、差し出した。

「三国さん…ごめんなさい…あたし…」

「弱音、吐いたっていいんだ。
疲れたら休んだっていいんだ。
和音に頼ってもいいし、神童や霧野、色んなやつを頼ればいい。
俺にも頼っていいんだぞ、たった一年だけど先輩だし。」

頼ってほしい。

小学生の頃からの知り合いだし、同じ部活の先輩後輩どうし。

それにこの胸のどきどき…

「三国さん…、頼っていいんですか?
あたし…すごく迷惑かけます…
抜けた南沢さんの穴埋めも出来ない、剣城の代わりも出来ない…」

必殺技だって、神童のフォルテシモに比べたらまだまだ…

「和深は和深のままでいいんだ。
和深がほかの誰かになる必要なんてない。」

ぽんぽんと頭を撫でる。

するとどんどん和深の顔が赤くなった。


よわね、涙と一緒に吐き出した


(そんなに何回も名前を呼ばないでください…照れます…)

(そんなに呼んでるか?)

(無意識ですか…)


和深が公式戦初出場を果たしたのはその数日後のこと。



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