コンビネーション!
□優しい唇が弧をえがく
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「浜野ー部活行こうぜー」
「なにさ今日は早くない?
いつもはゆっくり行くくせにさー」
円堂が監督になってから、ゆっくり部活に行くようになった。
円堂監督に対する反乱の意を込めてなのだろうか。
「なんか嫌な予感がするんだよ。」
ざわざわ、胸騒ぎがする。
悪いことではなさそうだが、なんでもないということを早く確認したい。
「なに、和深関係?
普通年頃の男女の姉弟って仲悪いんじゃねーの?」
「仲良くちゃわりーのかよ…
仕方ないだろ、双子なんだし…ほっとけねぇんだよ、和深のこと。」
奇妙なテレパシーで繋がっている、不思議な関係。
切っても切れない縁、鏡をみているような容姿。
どうしても世話を焼きたくなる、焼いてしまう。
「いいねぇ姉弟ってさ。
今度また和深と釣りにいってさ、惚気話でも聞こうかな、和音の。」
「なっ!!
やめろよな、そういうの!!」
*
「おはよーございまーす」
「おー、来たか!
今日は早いな、お前ら!」
今日の練習の確認を神童としていた円堂が声をかけた。
「あ、その…まあ。」
浜野はこめかみを少し掻いてみた。
それとは裏腹に辺りをキョロキョロしている和音。
――和深がいない。
いつもは着替えのためか一番乗りなのだが…。
「和深なら談話室の方にいたど。」
和深が談話室で誰かと話しているところを目撃したようだ。
「あ、ありがとうございます、天城さん!」
そういうと談話室の方に走り出した。
*
「和深!」
談話室の扉を勢いよく開ける。
中にいたのは和深と、見知らぬ桜色の髪の女性。
いや、どこかでみたことあるような…。
「和音?
どうしたの、そんなに慌てて…」
少々驚きつつも質問した。
「いや、なんか胸騒ぎがしてさ、なんも変わりない?大丈夫?」
「変わり…あ、これ落としちゃったくらいかな?
でも梓さんが拾ってくれたから!」
先ほどまで旅にでていたクマのぬいぐるみ。
今は談話室の机にいる。
「すごい、ホントにそっくりだね!
僕と兄さんとは大違いだね!」
目元は似てるとよく言われるが、それ以外は余り似ていない梓にとってはうらやましい限り。
「…梓さん?」
「はい、僕が風丸梓です、よろしくね、和音君!」
ふわりと花を浮かべたように微笑んだ。
優しい唇が弧をえがく、サファイアの慈愛
(…和音君?)
(ちょっと和音、顔赤くなってる!!)
(……。)
(そろそろ練習を始めたいのだが…)
一番下は神童くん。