コンビネーション!
□大切な落とし物
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「ない…ない…
どうしよう…大切なものなのに…」
校舎を走り回る和深。
なにかを探しているようだ。
「和音とお揃いのクマなのに…」
鞄につけていたお揃いのぬいぐるみ。
気づいたときにはもう疾走していた。
いつもいるはずの場所にいない。
急に不安な気持ちになった。
「どうしよう…和音…」
バレンタインのときに作った、大切な大切なマスコットなのに。
「もっかい探してみよう…
どこかに落ちてるかもしれないし…」
泣きそうな顔をした和深はもう一度校舎内を走り始めた。
*
「円堂君、久しぶり。」
サッカー棟にあるミーティングルーム。
そこに円堂守がいた。
「梓!?
お前膝大丈夫なのかよ…」
来校者カードを首からさげている。
春奈から今日梓が練習を見学に来るという知らせは受け取っていたが。
「まぁ…そこそこかな。
家にいてもつまらないし、じっとしてたら筋肉落ちちゃうし。」
怪我をしているのにも関わらず。
「取り敢えず座れよ。」
ミーティングルームの椅子を引いてやった。
「ん、ありがと。」
笑顔を浮かべ、引いてもらった椅子に座った。
円堂もその隣に座った。
「あ、ねぇ円堂君。
僕ここに来るまでにこんなの拾ったんだけど、部員の子のかな…」
サッカー棟の入り口付近に落ちていた、ピンク色のクマのぬいぐるみ。
色的に女の子のかなとは思うが、サッカー部にいる女子なんてマネージャーくらい。
殆どが辞めてしまったと春奈はいっていた。
「ああ、多分和深のだな。」
「よかった、持ち主みつかって。
もうすぐ部活始まる時間だよね。
待ってたら和深ちゃん来るかな?」
会って直接渡したい。
そしてサッカーについて語り合いたい。
「ああ、くるよ。」
扉を見据え、いった。
「遅くなりました。」
開いた扉から入ってきたのはユニフォームに着替えた和深。
心なしか元気がない。
「今日も一番乗りだな!
梓、あいつが和深だ。」
「これ、あなたのクマでしょ?
落ちてたの、ここの入り口の近くに。」
立ち上がり、若干膝を引きずりながら和深の前まで歩いてきた。
「嘘…どこにもいなくて…探し回って…こんなとこにいたんだ…
ありがとうございます、えっと…?」
お礼をいいたいが、名前がわからない。
「ああ、僕は風丸梓。
よれしくね、和深ちゃん!」
被っていた帽子を脱ぎ、にこりと笑った。
大切な落とし物、大きな拾いもの
(嘘、霧風!?)
(あれ、僕のこと知ってるの?
僕って意外と有名人?)
(梓さーん…)