コンビネーション!
□じんわり、とける
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side:和音
今日は部活を休んだ。
速水も倉間も浜野も、行かないっていってた。
きっと霧野も行ってないし、神童はそもそも学校を休んだらしい。
和深も機嫌悪そうだし、行かなくてよかったのかもしれない。
部活に行ったのなんて、松風と西園とマネージャーたちだけなんだろうね。
「あれ、神童、霧野…」
自転車は押し、和深と二人で歩いていると、神童と霧野が前を歩いていた。
霧野は学ランで、神童は私服だった。
やっぱり学校休んだんだ。
「なんだ葛城か。
こんな所でなにやってんだよ、部活は?」
“葛城”で纏められるのはあんまり好きじゃないけど、幼なじみだし。
「その言葉、そっくりそのまま返すよ。」
お互い部活をサボったのは間違いないけど。
「偵察だよ、偵察。
河川敷で練習っていってだろ?
橋の上からみえるかなって。」
二人はこれから河川敷に向かうらしい。
「和深、オレらも行かない?」
「和音が行きたいっていうなら…」
まだ少し機嫌が悪いらしい。
でも、本当に円堂監督がフィフスセクターの手先なのかどうか確かめなきゃいけないから。
*
河川敷。
サッカー場がよくみえる橋の上。
松風と西園、円堂監督がいて、あと隠れるようにサッカー部員が。
…南沢さんだけいない。
「おーやってるやってる!」
女の人の声。
和深とは全然違う、大人な感じ。
驚いて顔を上げた。
帽子で顔が隠れていてよくはわからないけど、春奈先生と同じくらいの歳にみえる。
「あの…どちら様ですか?」
神童が女性に訪ねた。
「あ、僕はあそこにいる円堂守の幼なじみ。
通りすがりのサッカーマニアだよ。」
自分のことを僕っていう、不思議な人。
「君たち、雷門中だよね。
サッカーに興味あるの?」
「いえ、サッカー部です。」
今日はサボリの。
「サッカー部なんだ!
懐かしいね、僕のいた頃とユニフォームも変わっちゃって…
制服も変わって、校舎もみんな…
なんか雷門中じゃないみたいだね。」
過去の雷門中生みたいな口振り。
「でも円堂君が新しい風を起こす。
楽しみだなぁ…あ、フットボールフロンティア…今はホーリーロードだっけ?
ちゃんと観にいくから、頑張ってよね。」
この人は知らないんだ…
ホーリーロードはフィフスセクターによって支配されている。
どんなに頑張ったって、勝敗指示が出されれば、それに従わなきゃならない。
和深がサッカーを続けるためには、目立ってはいけないんだ。
「例え勝敗指示が出てても、円堂君ならきっと変えてくれる。
もう一度、あの頃のサッカーに…
伝説のイナズマイレブンに…!」
そういうと、女の人は去っていった。
「なんなんだ、あの人…」
「…霧風。」
和深がそう呟いていた。
凍りついた心がじんわり、とける
(不思議な人だったな…)
(……。)
(ねぇ、和深?)
(今の人…霧風だよ…!!)