コンビネーション!
□自転車通学の特権
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「和深、今朝松風と朝練したんだってな。」
「え、何で知ってるの?」
和深が着替え終わるのを待っていたら、もうみんないなくなってしまっていた。
鍵は春奈先生がやっておくといってくれたので、お言葉に甘えた。
「調理実習前にあったんだ。
あいつ、オレのこと和深だって思ってたんだとよ。」
「そっか…
あたしも朝まで男だと思われてたみたい。」
サッカー部にいるから、男だと。
「まあ間違われたのはおいといて、楽しかった。
久しぶりに騙せてね。」
入部から一年たってしまったサッカー部ではもう殆ど間違われなくなった。
昔からそっくりなことを武器にし、人を騙して遊ぶことが多かった。
今でもたまに入れ替わってはみるも、すぐにバレてしまう。
「あはは、いいねそれ。
今日は松風だったから、次は西園か…それとも空野か?」
「どっちでもいい!
やっぱりいいね、双子ってさ。」
双子ならではの遊び。
騙したり、からかったり。
「ねえ和音、今日チャリ?」
「ああ。
朝練遅刻しそうだったしな。
後ろ乗るか?」
雷門中の自転車置き場。
水色の鑑札がついた、青い自転車が一台。
「やった!
ありがと和音!」
*
「風が気持ちいいー!」
河川敷を駆け抜ける、二人乗り自転車。
「ねぇ和音は髪切らないの?」
「まだ切らない。
本当にやりたいことが決まったら切るよ。」
和深と同じ長さの二つの尻尾。
この髪のせいもある、女に間違われたり。
「そっか。
みつかるといいね、うぅん、和音ならきっとみつかるよ。」
赤い赤い夕焼け空と、駆け抜ける風、自転車通学の特権。
(あたしもまだ髪切らなーい!)
(なんでだよ…)
(だって毎朝和音に結ってもらいたいんだもん!)