コンビネーション!

□飛んできたボール
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「すみませーんボール取ってくださーい!」

足元に転がってきたボール。

「はい!」

それを拾い上げ、蹴り戻した。

「ありがとうございまーす!
って、葛城先輩!
おはようございます、朝早いんですね!」

「おはよう、松風!
松風も早いね、吃驚したよ。」

普段は葛城が一番乗り。

朝練の準備をしている時間帯だ。

「入部したばかりなんで、足引っ張りたくないんです!」

「そのいき!
みんなが来るまで練習付き合うよ。」

少しだけ離れた。

天馬の苦手なパスやトラップ、一人だけでは練習できない技の特訓をはじめるらしい。

「葛城先輩はどのポジションなんですか?」

ぽーん。

パスを回しながら。

「FW。
まあ、三ヶ月前に二軍からあがったばかりのベンチだけど。」

自称“雷門サッカー部のベンチの守護神”

「松風は確かMFだっけ…
神童と同じ場所か…」

“神のタクト”と呼ばれる、神童拓人。

葛城と同じ二年生ながら、雷門サッカー部のキャプテンをつとめている。

「松風がどんなサッカーをするのか、楽しみ。
あたしのサッカーはまあ…当分はみれないと思うけどね。」

始業式の日に起きたあの事件。

二軍は全員辞め、一軍からも何人か辞めた。

残ったのはやっと試合が出来る十一人。

一年生が三人入り、結局彼らはベンチのまま、監督に呼ばれるのを待っているだけ。

「先輩はベンチ嫌いなんですか?」

「え、好きだよ。
だって雷門のベンチ、あたしたちが守らなかったら誰が守るの?」

葛城の決めセリフ。

控えがいるから、イレブンのみんなが頑張れる。

それくらいのことしかできないから。

「かっこ…いいです!!
葛城先輩かっこいいです!!」

「かっこいいっていわれたのは初めてだよ…」

普段は馬鹿にされ、笑われるばかり。

「おーい、和深、松風ー!
朝練始めるぞー!」

呼びにきたのは霧野。

「サンキュー霧野!
よし、松風行くよ!」

飛んできたボールをキャッチし、走り出した。

「葛城先輩って、和深って名前なんですね。
なんか…女の子みたいですね!」

「え、だって女の子だもん。」

「…え?」

「いや、あたしは女の子。
女の子だけど、正式なサッカー部員だよ。」


衝撃と共に、飛んできたボール。


(ええぇぇえ!!!?)

(ひどいよ松風!
あたしのどこが男の子なんだよ!)

(いや、お前は男の中の男だよ…性格的な意味で。)




 

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