奥の茶葉

□シンクロ
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翌日、あいつは音楽室に現れなかった。
別にわざわざ覗きに行った訳じゃない。いつまでたってもあいつのトランペットが聞こえて来ないのだ。昨日、俺の耳についたあの曲…「極彩-カラフル-」というらしい。楽譜が廊下に落ちていた。
その書き込みだらけの楽譜をみると、あいつのこの曲の、最後のコンクールにかける気持ちがじわじわと伝わってきた。

「うるさいか…」

一人、美術室の背もたれなしの椅子に腰掛けながら俺はつぶやいた。

ふと、窓の外を見ると陸上部が走っているトラックの脇…色あせた水色のベンチのところであいつが一人トランペットをふいていた。
でも、あまりはかどっているようには見えなかった。

俺は視線をキャンバスに戻した。キャンバスの中からは、あの黒猫が笑っていた。

その日、美術室の中から音が聞こえることはなかった。
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