奥の茶葉

□mirror
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α「誰?」

念のため聞いてみる。

β「?
やだな、自分の顔も忘れちゃったの?
僕は君だよ!」

返ってきたのは、予想通りの反応。

α「…」

β「どうしちゃったの?固まっちゃって(笑)
僕が二人いるのが、そんなに可笑しいかい?」

可笑しいもなにも、
いつものように歯を磨くために鏡の前に立ったら、鏡の中の僕が勝手に頭をかいたのだ。
そして、思わず「誰?」と聞いたら、返事が返ってきた。

α「だって、普通は鏡の中の“もの”は、喋らないはずだろ?」

β「う〜ん、“もの”は喋らないよ。でも“人”は…」

α「普通は、“人”も“もの”も鏡の中なら、勝手に喋ったり、動いたりしないの!」

β「ふーん。つまんないの…」

鏡の中の僕はいじけたように言う。

α「また、勝手に喋ってる!」

β「…わかったよ。」

そういったきり、鏡の中の僕は喋らなくなった。
ただ、表情はまだ不服そうなんだ。

α「表情も!」

β「はいはい…」

鏡の中の僕の表情が少しイライラしたものに変わった。
そうして、鏡の中の僕と僕自身の姿がピッタリ重なった。

―そして―
―僕の身体が動かなくなった―
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