奥の茶葉

□ばあちゃんの約束
1ページ/5ページ

バサバサバサバサ…
「ばあちゃん、すごいすごい!!」
ロッキングチェアに座った老人が、シルクハットの中から真っ白い鳩を取り出す。それを見て小さな男の子が手を叩いてはしゃいでいる。
「ありがとう。孝志。」
「ばあちゃん。もっと、もっと!!」
「今日はこれでおしまい。」
「え〜〜〜、やだやだ!もっと、ばあちゃんのマジックみたい〜!」
駄々をこねる男の子の頭をそっと撫でながら、老人は囁く。
「ごめんね、今日はもうマジックの種がないんだよ。この種はね、ばあちゃんが若い頃イギリスで修行していたころ、ばあちゃんの師匠からもらった大切なものなんだよ。だから、ね、今日はおしまいにしよう。」
男の子は下を向き何か言いたそうな顔をしている。
「言ってごらん。」
「ねぇ、ばあちゃん。それじゃあいつか僕をイギリスに連れて行ってくれる?」
老人はそれを聞くと、一瞬哀しそうな顔をしたが、すぐにもとの優しい顔になり言った。
「ああ、孝志がもう少し大きくなったら、一緒にいこう。」
それを聞いた男の子は、
「やったー!ばあちゃん大好き!!」
と言って跳びはねて喜んでいた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ