奥の茶葉

□Nature Fireflower
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「やだ、やだ〜!たーくんもゆかたきる〜!!」

辰之は姉の琴音の着ている浴衣の裾を引っ張り、駄々をこねていた。

「たーくん、メッ!だよ。これは、女の子がきるものなの!」

そういって、琴音は浴衣の裾を力いっぱい引っ張る。
しかし、辰之は張り付いたままで、

「や〜だ〜!たーくんもゆかた〜」

と泣きじゃくっている。

「ほらほら琴音も辰之も早くしないと花火始まっちゃうわよ!」

「「だって〜〜」」

浴衣の引っ張り合いをしている姉弟には母親の言葉は届かない。

「辰之!お前には来年じんべいさんを買ってやるから、今年は我慢しなさい。」

膠着状態の二人に彼等の父親が声をかける。

「ひっく、じんべいさんって、な〜に?」

赤く目を腫らした辰之が不思議そうな顔で周りに尋ねる。

「じんべいさんはね男の子のゆかたのことだよ。」

それに琴音は得意げに答える。

「ほんとう?」

辰之が両親の顔を交互に見ながら尋ねると、二人とも首を縦に振った。
辰之の顔がパァーと明るくなる。

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