奥の茶葉

□虹の記憶
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桃「お兄ちゃーん。待ってよぉ」

僕「桃子、遅いぞ!」

桃「待っててば!」

六年前の夏、僕と妹の桃子は田舎のじいじの家に家族で泊まりに来ていた。僕の家族は母さんと父さん、それに妹の桃子の四人だった。僕達兄妹は、東京の自宅より田舎にあって空気の綺麗な、じいじの家の方が好きで、毎年夏にじいじの家に遊びに行くのを楽しみにしていた。
じいじは物知りで、良く僕達を裏山に連れて行っては、虫や花の話をしてくれた。
中でも僕達が1番好きだったのは、虹の滝の話だ。なんでも、この裏山のどこかに虹の滝と呼ばれる滝があるらしい。その滝にはいつも虹が架かっていて、それはそれは綺麗な物らしいのだ。じいじは当時まだ小さかった僕達をからかうつもりでこの話をしたのかもしれないが、僕達は本当に虹の滝があると信じて、それを探そうとした。
しかし、じいじが言うには、その滝は大人には決して見つけられず、子どもだけがその虹を見つけることが出来るらしいのだ。
だから僕達は、じいじがお医者さんへ、母さんと父さんが昼寝をしている間にこっそり裏山へ向かった。
子どもだけで裏山に行くなんていったら、父さんも母さんも、じいじだって絶対に反対するだろうからね。
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