新しい茶葉

□屍体を抱いて眠る夜の夢
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「あ…ああ……」

やっちまった…
俺はまだ酸化していない、噴き出したばかりの鮮血に染まったナイフを握り締めた。
ぐっと握った後、ゆっくりとそれを取り落としたのだ。
都会の喧騒を見下ろす静寂の中、場違いな音が甲高く鳴り響く。

膝を地に付けた俺の足元に濡れた感触が伝わる。じわじわと広がる紅色はタイルの目にそって、その範囲を広げて行く。
その源には彼の心臓、穴の空いたそこは月灯りに照らされ不気味に光る。

「た…隆人、……隆人…」

フルフルと震える腕でカタカタと彼の身体を揺するが、彼は一切の反応を示さない。ぐちゃぐちゃに濡れて行く俺の服、重くなる身体…
俺は再びナイフに視線を送った。手を伸ばせば届きそうな位置にあるそれ。俺はゆっくりとそこから隆人の胸に空く穴を眺めて、自分の両手を見る。
赤い…紅い、アカい、朱い、あかい……
額に手を当てると感じる滑る感触。

「あ…あ……あ゛ーーーーー!!」

学校の屋上、俺の声は静かに夜の闇を切り裂いた。
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