新しい茶葉

□シリアルキラー
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俺にとってそれは小さい頃の夢で、とてもとても嬉しいものだった。
両親は頑として認めようとはしなかったが、俺の家は典型的な貧乏で万年金欠だった。
俺は年収250万で満足している親父も、ご近所での評判ばかりを気にするお袋も嫌いだった。
体裁ばかり気にする奴らは、庭付きの一戸建てに真っ白なシーツが干されていることばかりが大切で、一人息子が何を欲しがろうがまるで相手にしなかった。
俺の朝食はいつも白いおむすび一つ、海苔も塩もついてないとても貧相でつまらないもの。
安物の麦茶で流し込むと喉の奥がイガイガして気持ちが悪かった。

俺の憧れ。
チョコレート
綿菓子
コーラ
ラムネ
ビスケット
グミ・アメ・ガム
苺の乗ったショートケーキ
とにかく甘いもの。未だかつて口にしたことのない嗜好品を食べる、太った同級生を見る俺はさぞ惨めであったろう。

両親の見栄っ張りに感謝したのは多分これが初めてだろう。あまりに俺が痩せていて、みっともないから…そう言ってお袋が買ってくれた初めての我が儘。
チョコフレーク入りのコーンフレーク。嫌で嫌でしかたがなかった朝食が、輝かしい時間に変わった瞬間だった。一箱のコーンフレークを湿気らせながら、二週間も保たせた事を俺は今でも覚えている。
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