新しい茶葉

□年上のアイツは同級生
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来ないと誰もが思っていた。
何時も空席の一番後ろの窓側二列目の席。先生も出席番号十二番には斜線を打つのが癖になりだしていた。
梅雨明けのある日、八時三十四分五十秒に教室に飛び込んだオレは驚いた。
席が全部埋まっている。
ソイツは黙って机に突っ伏していた。微かに上下している背中は彼が早過ぎる昼寝を満喫していることを表していた。
教室にチャイムが響き、担任が欠伸をしながら入ってくる。しかし、誰も村田教諭の方を見ようとはしない。教室中の双眼がただ一人の人間を見ていた。
連絡でも受けていたのだろうか?村田教諭はアイツに一言も触れず、サッサとHRを終わらすとまた欠伸をしながら戻っていった。
静まり返った教室で動く者は一人としていない。彼が起きたからだ。どうやら、授業は受けるらしい。しかし、話しかける者は一人としていない。いくら留年生といえ、総じて年上とは恐いものだ。
息を潜めて誰かが話しかけるのを、皆恐々と待っていた。
後ろを向いていたオレの耳に咳払いが聞こえた。見ると、一時限目担当の数学教諭が出席番号十二番、丹羽有弥の欄に書き込んだ斜線を訂正している所だった。
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