新しい茶葉
□ノスタルヂックレコード
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殊に今年の春、祐子と史裕は揃って受験生になった。勤勉な祐子は毎日帰ってからの数時間を机で過ごす。
すると、自然と隣家の史裕の部屋からレコードの音が流れてくるのだ。曲目が豊富で、それなりに祐子の好みでもある歌謡曲が流れてくる間はまだ良かった。
しかしどうしたことだろうか?ここ二週ほど、史裕の部屋からは決まって童謡の『赤い靴』が流れてくる。しかもエンドレスループ。あの短い歌が何時間も延々と繰り返されるのだ。
祐子はイライラしていた。
誰でも大して気に入ってもいない歌を四六時中聞かされるのは不快なものだ。
それが勉強中ともなればなおさらだろう。
トン、トン、トン、トン…
祐子はまだをかしの問題に苦しんでいた。一体女史は何がそんなにをかしなのか…
この二週間、祐子は勉強計画の乱れに焦っていた。
あのレコードのせいで…
理不尽といえば、そうかもしれぬ。
怠惰だといえば、そうともいえる。
しかし、今の彼女にはそう思えて仕方がないのであった。