新しい茶葉
□ノスタルヂックレコード
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その上には円盤状のレコードが置かれ、今もその掠れた音を披露している。
―あかいくつ はいてた おんなのこ…
二つの窓が開けられた今は、向かいの部屋から彼女の部屋に流れ込んで来る音は倍増していた。
ジジッ…
微かな音を最後に、流れていた音楽が止まる。
「これでいい?」
窓越しに、眼鏡をかけた彼が問いかける。
「ど・う・も!」
いーーーと歯をむき出して、彼女はまたピシャリと窓を閉めた。
ズシズシと音が鳴りそうな足取りで、彼女…弘中祐子は机に戻った。
問題は大問四の女史がをかしを連発している理由について問うた所で、先程から止まっていた。
別に祐子は、童謡『赤い靴』が嫌いな訳ではなかった。かといって、別段隣人、在原史裕が嫌いという訳でもなかった。
問題はその組み合わせである。
彼、史裕は昔から何かに熱中するとそれだけに没頭する悪い癖があった。
彼が蓄音機とレコードにはまったのは約一年前、それから毎日のようにレコードの音が祐子の部屋に届く程の大音量で何時間もたれ流されていた。
ここまではまだいい…