tokiya/long

Crescent moon, crescendo mind
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秋の気配が漂い始める9月。
夏休みが明け、またにぎやかな学園生活が始まったある日。
その朝、私は急いで学園へと向かっていた。


「遅刻しそう…!」


今日はいつもより起きるのが少し遅くなってしまい、私は焦っていた。
昨日の夜、ふっと浮かんできたフレーズを書きとめてたら止まらなくなって、つい夜ふかししちゃったんだよね…。
そんな風に自分の中の何かが突然溢れてくることはよくある。今までもそういうことはあったけど、春ちゃんとパートナーを組んでから特に多くなった。春ちゃんの才能に私の感性も触発されるのかもしれない。だから最近は寝不足で学校に行くこともしばしば。
睡眠を求めけだるさを引きずる体に歯がゆさを覚えながら、たたたっと階段を駆け降りる。
腕時計とにらめっこ。
ああ、なんとか間に合うかも…!
そう思って少し胸をなでおろしたとき、私の前に突然大きな影が立ちふさがった。

「おはようございマース、Miss. ○○!」

「…えっ!?」

この声は…。
おどろいて顔を上げると、そこにはやっぱり、

「学園長!!」

おはようございます、と私はあわててお辞儀した。

「ハッハー、挨拶は大事ですネー」

そう言いながら学園長は…ずんずんと近づいて来る?

「突然ですがMiss.○○、アナタに協力してほしいことがありマース」

そして学園長は私の目の前でぴたっと止まり、私の顔を覗きこんだ。
相変わらず近い…。
それにしても、私に協力してほしいこと?なんだろう。

「私にできることなら…」

何でもします、と言おうとしたけど、それは叶わなかった。

「ありがとうございマース!」

学園長が満面の笑みでその続きを遮ったからだ。
あまりの速さ、私が了承することがわかっていたみたい。いや、了承しなかったら無理矢理連行されたのかもしれない…なんて考えていると、

「ほいっとな」

「へっ!?」

突然体を襲った浮遊感に私は驚いて声を上げた。
視界もぐるんと急回転。何が起こってるのかと思ったら…、

「では、ワタシと一緒に来てもらいマショウ!」

わ、私、学園長の小脇に抱えられてる!?

「危ないので大人しくしててチョーダイ!とぅっ」

「わっ!」

まるで小さな子供のようにひょいっと私を抱え上げたまま、学園長は虚空に飛びあがった!
それはさながら空を飛んでいるよう。学園長はものすごい勢いで、軽々とジャンプしながら前へ進んで行く。全身が経験したことのないような上下運動に襲われる。

「た、高い…!」

あ、だめだ…なんか気が遠く…。

「すーぐ着くので、ちょびっとだけ我慢してくださいネー……っと。おや、少し刺激が強すぎましたか」


私はこの急な変化に耐えられず、ふっと気を失ってしまった…。








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