tokiya/long

Crescent moon, crescendo mind
5ページ/10ページ










『くっ!』

「ああっ!」

音也くんが投げ飛ばされてフェンスにぶつかる激しい音がした。
みんなが学園長に向かって行く様子を、私はモニター越しに見守っていた。モニターは学園長が置いて行ったものだ。
戦況はなかなか厳しい。みんなはずっと学園長に挑み続けているけど、攻撃が学園長にまで届くことすらほとんどない。みんなはもうぼろぼろで、見ている私まで苦しくなった。

『はっはー、そんな軟弱な攻撃では、いつまで経ってもワタシは倒せませんヨ!』

『っ……まだまだあ!!』

音也くんは何度倒れても繰り返し、繰り返し学園長にぶつかっていく。何度も何度も…。

『とりゃああぁ!!』

音也くんが叫びながら拳を放つ。だけどまた学園長に一蹴されてしまった。

「見てられない…」

あの折りたたまれた紙を開いて読み、私は驚愕した。
そこにはこの選手権なるもののルールが書かれてあった。
私は人質で、この檻の鍵は学園長が持っている。学園長を倒した一人には即デビューの権利を得、私は解放される。でも…。
もし今日中に誰も学園長に勝つことができなかったら、この檻は爆破されてしまう。
側に座るライオンを見上げた。

「ぐるるる」

勇ましい横顔。どうやらこの子は見張りらしいけれど…。
この檻は本当に爆破されてしまうのだろうか。
学園長が自分の生徒を危険にさらすとは思えない。でも自分の行ったことを反故にするとも思えない…。私はどうなってしまうのか。
でも今はそのことよりも戦うみんなのことが気がかりで、私はずっとモニターを見つめ続けていた。

『…くっそー!』

今度は翔くんが学園長に向かって行った。またパンチを繰り出す…かと思いきや、直前で足元を狙って蹴りを入れようとする。

『甘い!』

『っだあぁ!』

しかしフェイントを見切られ、足を掴まれ投げられてしまう。

『翔!ってうわぁ!』

「ああ!」

投げられた翔くんは音也くんにぶつかってしまい、ふたり一緒に屋上の端へと飛ばされてしまい姿が見えなくなった。
その後もレン様や真斗くんが学園長に何とかダメージを与えようとするけど、すべて空振り。なっちゃんのパワーは学園長にも匹敵するみたいだけど、眼鏡をかけている状態では学園長を超えるほどではないらしく、決定打は出ない…。
終わりの見えない闘い。攻撃すらあたらないのに、あの最強な学園長に勝てるの…?

「みんな…」

不安になって唇をかみしめる。
選手権が始まって何時間が経っただろう。
もう日が暮れようとしていた。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ