tokiya/long

Crescent moon, crescendo mind
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私たちがたどり着いた時、他の挑戦者たちはすでに早乙女さんの手によって全員が打ちのめされていた。

「はっはっはー、手ごたえがないですねえ。こんなものですカー」

屋上の中心でひとり高笑いをしている早乙女さんの前に倒れている人、人、人。
先ほどまでホールにいた面子だ。

「こんな程度で私に挑んでくるとは、彼らもまだまだデース」

他よりも遅れてホールを出た私たちだったが、早乙女さんがどこにいるのかはすぐに知ることができた。叫び声や雄叫びが校舎の屋上から絶え間なく聞こえてきていたからだ。すぐに来てみたら、そこにはすさまじい地獄絵図が広がっていたというわけです。

「うわ…」

私たちは互いに声も出ず、茫然としてその光景の前に立ち尽くしていた。
選手権が開始されてまだ数十分も立っていないであろうというのに、これは…。

「おやおや、怖気づいてしまいましたカ」

そんな私たちを見て、早乙女さんは意地悪く笑った。

「そ、そんなわけないだろ!」

音也がムキになって反論する。

「ほほーう、そう言うからには少しはワタシを楽しませてくれるのでしょうねえ。ちゃっちゃっとかかって来なサーイ!」

「言われなくたって!!!」

音也が早乙女さんに向かって走り出した。

「だぁあ!!」

「ふんっ」

「うわあぁ!?」

音也が正面から拳を繰りだしたが、当然のようにかわされ、ぱっと放り投げられてしまう。

「今度は俺だー!」

音也を投げ飛ばして隙だらけに見えた早乙女さんの背後から翔がせまる。
しかし、

「はっはー!」

「ぅうわっ!!」

すばやく体を反転させ、早乙女さんは翔をもいとも簡単に放り投げた。

「わあ、翔ちゃん!大丈夫ですか〜!?」

四ノ宮さんが駆け寄る。
いくら翔が小柄とは言え、男子の体をああも簡単に投げてみせるとは…やはり早乙女さんは相当に手強い相手のようです。

「ていっ!」

「これでどうだ!」

その間にも聖川さんやレンが早乙女さんに挑んでいきますが、攻撃はことごとくかわされる。早乙女さんの体にかすりもしない。

「翔ちゃんの敵ー!!!とぅっ!」

四ノ宮さんが突っ込んでいきました。すさまじい速さです。早乙女さんも予想外だったのか、今度は避けきれませんでした。

「むっ!」

四ノ宮さんの拳を早乙女さんの拳が受け止め、ぶつかり合う。しばし睨み合うが、パワーは互角だったのか、双方ともはじき返され後方に飛び退いた。

「ふむ、Mr.シノミヤはなかなかやるようですネー」

早乙女さんがどこか楽しそうに指をぽきぽきと鳴らした。

「さて、」

そして私を見る。

「いつまで参謀気どりでいるつもりですカ。さっさとかかってらっしゃい」

「……………」

皆の出方を見ながら攻め方を考えていましたが、どうやらお見通しのようですね。
仕方ありません、行くしかないでしょう。

「…はっ」

私は地面を蹴った。






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