書庫1
□Area
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雨音が絶えない。
ノイズのようなその音は、遠い過去から晴れたことがなく、押し込められたような薄暗い雲の圧迫感から、エリアは解放されない。
「エリアは雨が嫌いになりそうだよね。……今だって少し、苛々する」
これは、雨が降っていることに対しての苛立ちではなく、雨が降っていることに気づいてしまったからこその苛立ちだ。
気づきさえしなければ、エリアの世界に雨は存在しない。
…そういうこと。
「……」
少しでも憂さを晴らしたくて、足元にあった小石を思いきり蹴ってみた。
…綺麗な放物線を描いて飛んでいく小石。
それは、確かな水音をたてて、水溜まりに落ちた。
エリアは小さく息をついて、踵を返す。
その小さな身体に不釣り合いな大きな蝙蝠傘が、危なっかしくゆらゆら揺れた。
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