書庫1
□汚れなき純白の花嫁。
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ベッドに押し倒されて、手首を掴まれて。
そうしたら、目の前には貴方の顔。
──憎くはないわ、ちっとも。
この部屋にある唯一のささやかな窓。
そこから見える景色をずっと見ていたの。
──貴方が来るまで。
毎日毎日、白い薔薇が綺麗に咲いているのを見ていたの。
──純潔を奪う、貴方が来るまで。
「今日は何をしてた?」
ずっと、窓の外を見ていました。
──紅く染まった薔薇を。
『ず…と、窓の…外、を』
いつからか、言葉をうまく紡げなくなって。
「あぁ、そう」
…貴方の綺麗な緋色の瞳に映るもの。
それは狂気と───…。
「……」
徐に、貴方は私にナイフを向ける。
そして。
鋭利な光を湛えたナイフで、貴方は私の二の腕を斬りつけた。
…いたかった。
『…ぅ…っ』
血が流れていく。
…──真っ赤な血が。
貴方は傷口に口をつけると、傷口を下でえぐるようになぞる。
『んっ…いや……っ』
痛くて身をよじっても、貴方は放してくれない。
『──…っ』
純白のウエディングドレスが紅く染まる。
それは、まるで途切れることのない連鎖。
──薔薇は紅く染まって、
…それは心を映す鏡。
届かない、月。
とても似ている距離──…。
貴方と、私の。
白い薔薇の花言葉、『純潔』。