書庫1

□ハンバーグfullますたーど
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極めて平和な夕食時だった。
……多分。

しかし友人は徐に立ち上がると、冷蔵庫から黄色い調味料を取り出してきたのだ。

その時僕は黄色い調味料より彼がちゃんと『いただきます』を言わないことについて注意をしようと思っていた。

…この奇異な行動がなければ。

彼は無言のままハンバーグの上で黄色い調味料の容器を逆さまにすると、盛大にぶっかけ始めたのだった。

「ハンバーグにマスタードかけて食べる人見たことないよ…」

いや、もしかしたらそういう人もいるのかも知れないけれど。っていうかもしかしなくても、いると思うけど。
………此処にいるし。

「……」

彼は僕のコメントなんてお構いなしで、ハンバーグに何か恨みでもあるのかと疑うくらいに一心不乱にマスタードを降らせている。
…僕が種から作ったハンバーグに一体どんな恨みを持っているんだ……?

まさか、まずかったのか?!

でもまだこいつ一口も食べてないじゃないか!!

「ちょっと、ストップストップ!マスタードでハンバーグが見えなくなってる!」

見兼ねて彼の手からマスタードを奪い取ると、彼は弱々しくテーブルに顔を伏せ、微かにうぅと唸った。

「ごめん、君がそんなにマスタードが好きだったなんて知らなかったよ」

僕はマスタードをテーブルの上に置きながら謝罪した。

「…でも露草君、これはちょっといただけないなぁ。…うん、食べ物としていただけないと思うんだよね…。これだけマスタードかけたらさ…」

「…マドハンド……?」

……え?マドハンド…?

この状況で呟く言葉が何故マドハンド…?


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