Long2
□その恋に花束を
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「・・・・・・」
き、きまずい!!
俺はそんな思いを胸に抱えながら、出来るだけ礼儀よく食事をした。
周りには他の女の人がいて、誰も彼も美人で俺なんかより綺麗に食事をしている。つんっと済ましててピリピリした空気がなんとなく怖い。
理由はやっぱり・・・せっかくおしゃれして、綺麗に着飾って来たのに肝心の雲雀家当主がいないことだろうか。食事にも参加しないだなんて思わなかったから安心したような緊張が増すような・・・
「ちょっと!何で雲雀様が来ないのよ!」
「も、申し訳ございません!当主は体調が優れず・・・」
「私を誰だと思っているの!?セレーナファミリー長女なのよ!?」
ヒステリックな女の人の声にますます食欲がなくなった。母さんは温厚な人だし、友達も天然の子が多いから・・・あぁいうタイプには慣れていない。
ますます食欲が落ちていく。それでも残したらもったいないから頑張って口の中にいれ、お腹に溜め込んだ。
それにしても、雲雀家当主が姿を現さないんじゃ意味がない。俺がここに来た意味が。リボーンも俺が一度もアタックしてないんじゃ帰ってくるなっていいそうだし・・・
どうにか党首と話して振られてこなければ!他の人と少し違う目標を胸に、俺は胃の中に少しずつ食べ物を入れていった。
結局、党首は食事会に出てこなかった。ここまで来て帰りだす人もばらばらと見られる。きっとプライドが傷ついたんだろう。
お風呂は各部屋についていて、だから食事以外で部屋の外に出る必要はない。というか、出ないように注意をされた。危ないからと。
だから俺はとりあえずお風呂に入って、ベッドに体をなげうった。ぼふんっと体が跳ね返されるふかふかのベッドだ。
「はあああああ・・・」
これじゃあ婚約どころか面識を持つことさえ危ういよ。どうすんだ・・・。でもいくら考えたっていい方法は思いつかない。当主が怖い人だって言うのはもう、貴族界の常識のようなものだ。
受身でいてはいけないことは分かっているけどだからといって積極的に慣れるほど俺は肝が据わっているわけじゃない・・・。
思わずため息をついたそのとき
「ういたっ!!」
頭に激痛が走った。髪の毛を一気に引きちぎられたかのような痛み。ふさあと自分の横に落ちてきた、自分の髪とよく似たそれに顔が引きつっていく。
と、少し遅れてヒバードも降りてきて俺の隣に止まった。こいつが犯人か・・・。それを知っても無垢な動物にどうこうしようなんて気は起きなくて、むしろ脱力してしまった。
でも痛かった。素直に笑えず苦笑いをしながらヒバードを撫でる。ヒバードは気持ちよさそうに鳴いた。
「いいねー・・・、お前は」
どこまでも自由に飛べて。
どこにだっていけるんだろうなあ。
ボンゴレという地位に縛り付けられて誰かの言うままにするしかない俺とは違って・・・
「ツナ!ツナ!ソト!」
「そと?」
「マンゲツ!」
「満月・・・」
ちらりと見やれば真っ暗闇の中にぽつんと丸い月が浮かんでいた。満月、なんて言葉を知っているなんてだいぶ頭がいいんじゃないんだろうか。
満月を見ると庭の様子も目に入ってくる。俺の屋敷にあるものとは違う綺麗なものもたくさんあって・・・つい、好奇心に駆られた。
テラスから庭まではそんなに高くない。頑張れば降りられるかも・・・。変なところで自信を持って、木登りすらまともに出来なかった俺は・・・テラスからそっと足を伸ばした。
怖いから、下は見ないようにする。
っと、
「うわああああ!!」
つるりと手が滑って
お月様を視界に入れたまま、俺の体は落ちていった。