*短編*
□離れ行くキミの手を
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〜side Hikaru〜
「…え?」
柄にもなく、持っていたラケットを落としてしもた。
でも、そのラケットさえ、拾う気がない。
今の俺には、ただただ立ち尽くすことしか出来へんかった。
いつもどおり部活やって、
いつもどおり大好きな彼女と帰る予定やった。
でも、
いつもの明るい表情なんて一切見せず、
苦しそうな、辛そうな顔をした彼女から告げられたのは、
『光、別れよう』
そう、別れやった。
何がアカンかったんやろうか?
思いつく節はありすぎや。
最近は部活で忙しく、構ってやれへん日が続いた。
それでも俺なりに優しく接してたつもりやったし、
もちろん大事にしていた。
先輩と一緒にいれる毎日が楽しくて楽しくてたまらんかった。
これからもずっと続くと思うてたし、俺は離す気なんてあらへんかった。
言葉を返せへん俺をよそに、
先輩はクルリと背を向け立ち去っていく。
俺は、頬を伝う涙さえ拭けぬまま、
ただただ小さくなっていく先輩の背中を、
見続けることしか出来んくて、
追うことさえ、声をかけることさえ出来へんかった。
離れ行くキミの手を―――