世界一&純情
□名前で呼ばれたい
1ページ/1ページ
「うわっちゃー…これまた悲惨な周期中なのね」
たまたま帰りのエレベーターであった律くんの様子が、あの悪夢の周期ど真ん中な顔をしていた。
徹夜で、生ける屍の巣窟と化してるエメ編など見慣れているからどうでもいいが、律くんがフラフラと歩いているので肩をポンッと叩いた。
「夏希さ…ん…」
「はぁい、律くん。すっごい隈ね」
ソロソロと首を上げた律くんの目元は隈が酷いし、顔色も僅かに悪い。食事をしに出ていたみたいで手にはコンビニの袋を持っている。きっと中身は栄養ドリンクなんだろうな。
「えぇ、まあ……もう間に合わないかも、です…」
遠い目をする律くんに私は苦笑するしかできない。
「あらら、荒んでるわね」
「そりゃあ荒みもしますよ。原稿ギリギリで印刷所の人の目が怖いんですから(ガタガタ)」
なんかやさぐれた感じの律くんは表情が怖い。…相当追い込まれてるな。
「うん、落ち着こうね。終わったらお姉さんが美味しいご飯のお店に連れて行ってあげるよ」
「夏希さん…」
キラキラとピュアな瞳で見上げてくる律くんにウッと戸惑う。あぁ、そんなカワイイ顔で見ないで欲しい。アヤマチを起こしそうよ。
「が、頑張ってね!!」
そこはいいお姉さんポジションをキープする為に笑顔で激励しておく。
礼を良いながらもフラフラと歩く律くんを心配して見ているとなんだか視線を感じる。
「………」
振り返れば自販機の方からやって来た俺様何様高野様が私をジトリと見ていた。アイツはなんでそう私を睨むんのよ。
文句があるなら直接言えっての。私は高野の横にまで移動して腕を組んで見下ろす。
「アンタはなに人を睨んでるの」
これまた隈の酷い高野の視線はイライラ度が高そうだ。まっ、コイツの不機嫌の理由なんてもろわかりだけど。
「別に。そっちは暇そうだな」
「やぁね、暇そうに見えたなんて。こっちだってそれなりに忙しいのよ。今日は一息つけたから帰るけど」
「じゃあ帰れよ」
シッシッと手をヒラヒラさせる高野にムカつくがあえて文句は言わない。
「はいはい、帰りますよー。
……なによ、律くんに名前で呼ばれたのが悔しいんじゃない(ボソッ)」
去り際に呟いてみれば、案の定ギッと睨み付けてくる高野に私はしてやったりとニヘッと笑ってやった。
「いつか覚えてろよ、高橋」
そう言われて、はい分かりましたと言う馬鹿は居ないわよ。
「まぁ、今度じっくり話しましょうね。アンタの消したい過去話なんて腐るほどあるんだから」
フフンッと笑ってやればアイツは盛大な舌打ちをしやがりましたよ。一度ぶん殴った方がいいのかしら(-"-;)
「名前で呼ばれたいならそう言えばいいのに」
「言って、アイツが呼んでくれるようなら当にしてる」
ですよね。
律くんは恥ずかしがり屋な面もあるみたいだから呼ばないだろうな。
高野はお疲れと言って、エメ編に戻って行った。
本当に律くんはコイツのどこを好きになったのやら。
私にはいまだに全く理解できない。
20110729
カキコミの方が律が主人公を名前で呼んでいるのを高野が嫉妬している妄想と話していたので許可なく突発的に書いちゃいました。このあと律くんは高野さんに名前で呼ばないと離さないとか言われてればいいんです。←あっ、これいいな。いつか書くぞ。