世界一&純情

□貰えるものはもらうだけ
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美咲から呼び出しメールをもらったので、会社に近いカフェで待ち合わせをして待つ。

「夏希姉ちゃん、お待たせ!!」

美咲は紙袋を持って慌てて入ってきた。

「別に慌てて来なくてもいいのに」

椅子に座る美咲はやや汗をかいているから私は近くにいたウェイターさんに冷たいジュースを頼んだ。

「でも待ち合わせ時間ギリギリだし、姉ちゃんだって仕事あるだろ」

置かれたお冷やを一気に飲み干した美咲。

「まぁあるけど、んなの後でどうにでもなるし」

校了明けで特に差し迫った仕事もないし、今はフリーな感じだ。

「姉ちゃん………」

美咲が白い目で見てくる。ウェイターが美咲の前に頼んだ飲み物を置いていく。

「それで?何か用なの?」

改めて聞けば、美咲は持っていた紙袋をテーブルに乗せた。

「あっ、うん。これさ、良かったら貰ってくんないかな?大量にあって困ってるんだ」

私は紙袋を上から覗き込んで中身を見れば、中には綺麗に梱包された箱と中身が赤い瓶。

「…なに?苺ジャム?」

「そう。あとタルトも作ったから食べてよ」

ジャムにタルトまで作れるなんて、男の子なのに掃除・洗濯なんでもできるから本当にすごいわ。

「ありがとう。でもどうしたの、こんなに。ジャム作るにしてもタルト作るにしても多すぎでしょ」

大した質問じゃなかったのだが、美咲は遠い目をしていた。

「………あぁ、うん、今絶賛イチゴフェア中でさ」

「なにそれ」

「ウサギさんの兄ちゃんとたまたま会って、空気重くて早く帰りたくて苺が好きなんですーって言ったらそれから毎日大量に届いてさ。ウサギさんもなんか張り合っちゃって苺グッズ買ってきちゃうし…。家の中がファンシーになってるし冷蔵庫は苺だらけだよ」

大量の苺に苺グッズ……乙女か!?ジャムにするにも大量に使うのに、まだあるのね。
って言うか宇佐見さん〔春彦の方〕は何考えてるのかしら?井坂さんじゃあるまいから人に迷惑をかけるような人じゃなさそうだけど。

私は紙袋を自分の横に置いて苦笑した。

「それはご愁傷様ね。でも苺は貰っとく、ありがとう。タルトは編集の皆と食べるわ」

このタルトを出した時の、疲れから甘いものを欲する餓えた奴らの行動が目に浮かぶわ。

「そうしてくれると助かるよ」

本当に安心したかのような美咲の笑顔に、本当に疲れてるんだろなと感じる。
まぁ私としては美咲の手料理食べれるから嬉しいけど。


案の定、編集に戻ればタルトはあっという間になくなったのは言うまでもない。




20110725
20120405 加筆修正

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