世界一&純情

□テロリストに遭遇
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………私の周りって本当にアッチ属性の方が多すぎじゃないだろうか。

目の前で高校生に押し倒されている宮城先生の顔色が素敵に真っ青だ。

「た、高橋さん!?」

宮城先生の慌てようとは反対に高校生はギッと私を睨み付けてくる。
ああ、スミマセン、タイミング悪くてスミマセンね!!
悪かったからそんなに睨まないでよ。
ちなみに押し倒されている宮城先生は男で、押し倒している子も男だ。



これに至ったのには少し時間を遡る。

今日は会社に出社するも、担当の先生からの電話があり、今連載しているモノの資料が欲しいと駄々をこねたので、仕方なく協力して貰ってるM大学の教授にアポを取り指定の時間に来たのに……。

ノックをして返事が返ってくる前に扉を開けた私も悪かったが、開けた先にソファに押し倒されている先生。
宮城先生は私を見てフリーズしてる。

「えーっと、宮城先生。とりあえず、資料渡してからイチャついて下さい」

「ちょっと、高橋サン!?これ見てどうしてそんな答えになるのか俺に分かるように説明して!!」

「えっ、空気で。それと先生は受けだったんですね」

「〜〜〜〜違うから!!!」

物凄い顔で言われた。
じゃあ攻めなんですかと聞けばそれには言葉を詰まらせていた。いやいやBLじゃないならそこも否定しなきゃダメですよ、先生。

「ってかアンタ誰?」

宮城先生にのしかかってる高校生が私は営業スマイルを浮かべる。

「丸川書店 漫画編集の高橋と言います。宮城先生に資料を貰いに来たの。君は?」

「……高槻忍」

ムスッとした感じだが名前を名乗ってくれた。アンタ呼ばわりされたが、可愛いから許してやろう。

「そう、忍君ね。とりあえず、宮城先生から資料貰いたいからちょっと退いてもらっていい?私が帰った後なら何してもいいから」

「高橋サン……俺をなんだと思ってるんですか」

「それはもう素晴らしい芭蕉オタクですよね」

「………」

黙ってしまった宮城先生に私はなんとなく勝った気分だ。

「シラケた」

そう言って忍君は宮城先生の上からひいて、ソファに腰かけた。宮城先生はやれやれと起き上がると、よれたスーツを正す。

「この状態を見て動じないなんて君はすごいね」

「別に普通じゃないですか。私、恋愛は互いが好き同士ならそれでいいんじゃないかと思ってますし、遊びやそれを邪魔する奴は馬に蹴られてしまえばいいと思ってます」

異性だろうが同性だろうが、それを他人がとやかく言うのはどうかと思う。さらに言えば、好きあってる人達を引き裂くような真似をする奴はマジでいなくなればいいと思うし遊びで付き合うなんてホントにバ〇スだよ。

「……高橋さんを敵に回したくないって今全力で思ったよ」

「そうならないようにしてくださいねvv それより宮城先生、資料下さい!!ウチの先生がやる気を持ってる間に渡したいんです」

「あぁ、ちょっと待っててくれ。確かコピーしてこの辺に…」
そう言ってガサガサ探す先生。しかしそこにあるのは古書や資料や論文らしきものが山積みになっている一角。
絶対時間かかるな……。
ひっくり返している宮城先生を見てから忍君に視線を向ければ、彼は宮城先生をジッと見ていた。

「好きなんだね、先生の事」

ピクリと肩を震わせた忍君は私を見てからプイッと顔を背けられる。

「アンタには関係ないだろ」

「うん、ないね。でも好きの気持ちを否定することもしないよ」

「高橋さん、あったよ」


ようやく見つけた宮城先生から直接受け取って中身を見れば欲しかった資料が入っている。

「ありがとうございます。でも先生、一言言わせてもらえれば普段からもう少し整理しておいてくださいね。上條さんがめちゃくちゃ怒ってましたよ」

上條さんとは、このM大の助教授で私の資料集めにも宮城先生共々協力してもらっている。その上條さんは宮城先生のこの部屋を見る度に怒っているのに遭遇している。

「ハハハハ…努力はする」

「では私はこれで…。どうぞ続きをしてくださいね」

ドアに向かえば先生が頭を抱えている。

「だから、俺達はそんなんじゃないから」

「忍君、押すのもいいけどたまには引いてみるのもいいかもよ」

「高橋サン!?」

アドバイス的なモノを忍君に言えば彼が考える素振りをするので宮城先生がキョドっている。

「フフフ、それでは〜」

ヒラヒラっと手を振って教授室を出た。
人の恋を見るのは本当に楽しいわ!!!
それに比べて私は………。
あぁ、なんだか寂しいわね。

さぁて、先生にこの資料を届けに行きますか。
私は空を見上げてから歩みを進めたのだった。






20110629

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