世界一&純情

□カワイイ新人くん
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「あれ?可愛い子発見」

数日ぶりにエメラルド編集部を訪れて見れば、この間まで居なかった男の子がいた。
茶の髪に緑の瞳が際立ってる。男の人に可愛いと言うのもどうかと思うけど、可愛いと言うのがピッタリだったりする。

「可愛い?」

ピクリと眉を動かす彼。

「あれ、夏希ちゃんじゃん。どしたのー?」

可愛い彼の隣にいた木佐さんが私に気づいて話かけてくる。

「あ、木佐さんこんにちわ。今度ウチの作家さんとそちらの漫画家さんとでコラボがあるので、それの企画書提出に来ました。
ねぇねぇ木佐さん!!この可愛い子誰ですか?新人くん?」

「そうそう、律っちゃんだよ!!」

エヘヘと笑う木佐さんが可愛すぎてグリグリしたい。この人ホントに30歳なのか甚だ疑問になる。
私は『律っちゃん』と呼ばれた青年に向かって名刺を差し出す。

「初めまして、月刊オパール編集の高橋夏希です」

「あっ、初めまして、小野寺律です」

小野寺くん(あー、長いから律くんでいいや)は丁寧に名刺を取って礼をしてくれる。
私はウンと頷いて笑う。

「ご丁寧にドーモ。律くんは漫画編集経験あるの?」

「いえ、前は文芸をしてました」

文芸かぁ。
ココと正反対じゃん。

「あー、じゃあ漫画は大変でしょ?しかも少女漫画だからジャンル違うしねー」

「あ、まぁ…」

「でも慣れると、この仕事も楽しいから……ってコレ何?」

律くんの前にあるのは大量の訂正済みネーム。

「それね、前のネームなんだって。直してある箇所とか見て、なんで直したのかとか考えなきゃいけないらしいよ」

木佐さんが嫌そうな顔で言ってきた。確かに私もやれと言われたら絶対嫌なんだけど。
だから律くん、死にそうな顔してんだ。

「へぇ。それ誰が言ったの?」

「あ、高野さん…です」

一瞬、すっごい嫌な顔をした律くんはネームに視線を向けている。

「はぁ?高野?うっわーめんどくさっ…………でもそれが一番なのかなぁ(ボソッ)」

漫画編集の経験のない律くんには、こう言う方法で育てて行くのが結構早い事だけど。でもまさかこんな事、実際するなんて……………やらんだろ。

「??何か言いましたか?」

「ううん、なんでも。頑張ってね律くん!!」

首を傾げて聞いてくる律くんに私は首を振って答えれば、彼はフワッと笑った。

「はい、ありがとうございます」

うわっ、可愛い///
笑うとすんごい可愛いなーと思っていると、奥からどす黒いオーラが見えてきたので視線を向ければ、そこにはこの編集部のトップがいた。

「たーかーはーしー!!!テメェはお喋りする為に来てるのか!?」

イライラしてる高野。
何をそんなにイラついてんだか…。

「いーえ、仕事です。これはこの間の企画書の改訂版。こちらからの先生方は皆さんOK出たんで後は高野の方で調整して下さいな」

「分かった。内容を確認してこちらから連絡する」

企画書を手渡す。

「よろしく。あとウチの深田先生が千春先生にカバーイラストお願いしたいみたいなんだけど、平気?」

「あぁ?吉川先生はけっこう今でもギリギリだからなぁ。羽鳥に聞いてその辺調整してくれ」

「分かりました。無理そうなら私から深田先生には話すし、OKなら依頼書作成して持ってきます」

「あぁ、頼む」

仕事モードの高野はしっかりしてるからいいんだけど、俺様な所があるしなぁ。
にしても、高野ったら律くんを見る目が普通とちょっと違う。アレは恋してる人だ。まっさか早くも新人くんに手出してないよね。

「じゃあ、失礼しました。木佐さん、律くんまたー」

「うん、じゃあねー」

「お疲れ様です」

挨拶してくれる律くんはずっと私と高野を見ていた。あの視線は………困惑?嫉妬?それに近い感じなんだよな。なんかもやもやしてる雰囲気。わー…彼もアッチ属性だったかぁ。
けっこう可愛かったのに残念。
そういえば律くんってどこかで見たことがあるような気がするんだよな…どこか分かんないけど。
まぁ、高野と付き合っちゃえばそれはそれで面白いかも。
私はウフフと笑いながら自分の部署に戻る為に歩き出す。




可愛い新人とこわーい編集長の関係を知るのはそう遠くなかった。



20110619

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