世界一&純情

□私の周りは〇〇ばかり
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私の名前は高橋夏希。
丸川書店の月刊オパールと言う小説雑誌の編集者だ。

月刊オパールとは10〜20代をターゲットにした小説と漫画をミックスした雑誌でコアなファンが多い。私は入社以来その雑誌を任されている。


仕事も特に支障もなくやっているし、問題を起こした事もない。
これから普通に恋愛して、普通に結婚出来ればそれでいいんだけど……………





なぜか私の回りにはホモばかり。



いや別にホモが嫌いな訳じゃない。
むしろBLバッチコイだ!!

だが、それと私の未来予想図とは別。
私だってもう27。そろそろ恋人が欲しい。




「羽鳥さん、また千春先生を怒ったんですか?」

デスクに向かっていた羽鳥さんに言えば、彼は無表情に私を見上げてくる。
私は月刊エメラルドの編集部に立ち寄って、ちょうどいた羽鳥さんに聞きたかった事を聞いた。

「怒った覚えはないがな」

「千春先生からメール来たんですけど、仕事終わるまで外出禁止だって言ったそうじゃないですか。メールの絵文字が(ΩдΩ)(┳◇┳)(T_T)になってましたよ」

千春先生こと吉川千春先生は今売れっ子漫画家で、目の前にいる羽鳥さんとは幼なじみ。私は仕事で知り合い、今ではメル友でいる。
羽鳥さんの眉間がギュギュッと狭まった。

「高橋にメールするとはアイツは仕事してないのか(イラッ)」

「いや、してると思いますよー。文章の変換間違いだらけでしたし。少しは甘やかさないと嫌われちゃいますよ」

「お前には関係ない」

「関係ないですが、とばっちり食らうのは私です」

腰に手を当てて言えば羽鳥さんの顔が僅かに歪む。
羽鳥さんは千春先生に片想いをしている。本人は隠してるつもりだがバレバレ。それを知ってるからか羽鳥さんも私にキツくは言わない。
そういや木佐さんと美濃さんはいないみたいだから担当さんの所に行ってるのだろう。

「まぁいいですけど、後で連絡してあげて下さい」

「高橋、テメェ世間話してんじゃねぇよ!!用がねぇならとっとと帰れ!!こっちは忙しいんだよ」

編集長席に座っていた高野が鬼の形相で見てきたから私はフニャッと笑って、持っていた束を差し出す。

「いやいや用はあります。高野、これ今度の企画のヤツなんで目を通して置いて下さいね」

「チッ、…会議までに読んどく」

用がなかった訳じゃないので、高野も反論がないらしい。
高野とは高校時代からの腐れ縁的なものなので、私は呼び捨てで呼んでいる。まぁ若干一名気に入らないヤツがいるみたいだがそんなのシカトだ。
差し出した束を受け取った高野に、私はペコリとお辞儀をして見渡す。〆切が近いせいで編集部の空気がダークだ。

「よろしくお願いします。ではエメラルドの皆さん頑張って下さいねー」

とりあえず、退散した方がいいわね。修羅場に近づくに連れて高野の機嫌も悪くなるし。
手を振って私はエメラルド編集部から出た。



自分の編集部に一度戻り、用を思い出して会社の中を歩いていれば、前から見知った人が歩いて来た。

「おっ、高橋じゃないか」

「あぁ、井坂専務。仕事してますか?」

この丸川書店の御曹司にして、専務を勤めている井坂龍一郎。飄々としているが、中身はわりと黒い。というより人間的にどうなのだという時もある。

「おぉ、ちゃんとしてるぞー!!」

間髪入れずに言う専務に私はニッコリ笑って携帯を取り出す。

「あら、そうですか。じゃあ朝比奈さんに連絡を…」

「あああぁ!!!!高橋、俺は無性にコーヒーが飲みたいぞ。一緒に飲まないか!!」

かなりの慌てように私は確信した。


「……お仕事から逃げてきたなら、そう言って下さい。私だって絶対チクる訳じゃないんですから」

シゴト放棄をしては会社内を逃げ回っている専務を偶然見つけ、彼の秘書に連絡を入れてあげる事が度々ある。それもあって専務は逃げるのが得意になったとかならないとか自慢されたが完全シカトしておいた。

「そ、そうか…。いやー助かった!!」

今は安心したように胸を撫で下ろした専務を見てから、彼の後ろにいる人物と視線を合わせる。

「と、言わせてあげたいですが残念ゲームオーバーですよ」

「はっ?」

「龍一郎様、見つけましたよ」

ガシッと羽交い締めにされた専務は後ろにいた人物が誰か分かり、顔面真っ青になっていた。

「あああ朝比奈!?いつの間に!!」

「コーヒーの件からです」

ジッと専務を見る朝比奈さんに私は苦笑するばかり。
朝比奈さんは井坂専務の秘書で、専務の扱いにはなれてる。そして実は井坂さんが好きだったりする。

「高橋、気づいてのか!?」

羽交い締めにされている専務に私は外で培った笑顔を向けてやる。

「あぁ、いたのは知ってましたよ?でも私はたまたまここにいただけなので、別にチクってないですからね」

「高橋さん、龍一郎様がご迷惑をお掛けしました」

羽交い締めにしながらも丁寧に礼をしてくる朝比奈さん。
相変わらず丁寧だ。

「いえいえ、お気になさらず」

「だぁあ!!離せ朝比奈!!」

「ダメです。離せばあなたは逃げるでしょう。…それでは高橋さん、これで」

ジタバタ暴れる専務を抑えながら歩き出す朝比奈さんに引きずられる専務。

「はい、どうも。専務、お仕事して下さいねー」

「ああぁー高橋ーー!!!」

引きずられて行く専務に手を振る。
彼らも密かにお付き合いしている仲だ。
羽鳥さんもだが、私が知る限り木佐さんもそうだし高野もそういう感じだ。
本当に私の周りの男達はどうして皆こうなのかしら。

「はぁ、恋してみたいなー」

そう呟いてからまた歩き出した。





20110616
20110624加筆

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