折原家2
□寒い冬には
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「炬燵、ねぇ。別に暖房だって整ってるし、わざわざ揃える必要はないと思うけど」
「パパならそう言うと思った!でも、こたつってね、すっごくいいんだよ!そこでねむれちゃうし、テレビだって見れちゃうし、もうこたつから出たくないってぜったい言うと思う!」
「とーとも一回こたつに入れば分かるよっ、あれはぜったいいいものだって分かるから!」
この部屋はとても暖かい。
彼が寒がりなだけあり、羽織る物なんて必要ないぐらいに暖房が行き届いているので台所で火を扱っていたりすると逆に暑いぐらいだ。
寒がりだからこそ炬燵があってもいいのではないかと思うのだが、いつもの如くなかなかいい返事が貰えない。
「入った事ないから分からないんだよ!シズちゃんの家に行って、とーともこたつ入ってこればいいよ!」
「それがいやなら、しんらとかみかどとか、こたつもってる人いっぱいいるよ!」
「……ねえ、何でお前達が他人の家の炬燵情報を知ってるの?」
「ママがおしえてくれる」
「とーとより、ママの方がいろんな事知ってるよ!」
[そうなの?]とばかりに私の方を見る臨也。
まあ確かに最近炬燵出した、とか最近こういう事があったとか連絡を取り合うので色々知っているが、[とーとよりママの方が知ってる]と言うのは止めて欲しい。
それを聞いた臨也は少し考えた後、[ちょっと外に出てくるよ]と立ち上がっていつもの上着を羽織って玄関から出て行ってしまい、二人は不思議そうな顔で父親が出て行った方を見つめていた。
「しんらの家に行ったのかな?」
「こたつ入らせてもらいに行ったのかもしれないよ」
『さ、流石にそれは……ないと思うけど、パパだからなぁ』
どこに行ったのかは解らないが、この話とは無関係とも言えないし、何だかんだで仲間外れにされたくない人なので、子供達が言うように本当に炬燵があるか確かめに行ったのかもしれない。
―――そういう所も可愛いんだけどさ……っ!
それから数十分後。
私の携帯から友人でもあるセルティさんから連絡があり、臨也が突然家の中に入れてくれと言われた、という連絡が入っており、やっぱり確かめに行ったのか、と心の中で叫んでしまった。
「ママどうしたの?」
「とーとかられんらくあったの?」
『……パパ、今岸谷さんの家にいるんだって』
「やっぱりこたつ、入らせてもらいに行ったんだね!」
「シズちゃんはきらいだもんね、しんらの所行っちゃうよね」
『分かってたけど、分かってたけどっ!本当、可愛いよね、パパって……』
「かわいいねー、パパ」
「きっとこたつでぬくぬくしてるよ!」
何とも言えない表情で携帯を見つめているとそれに気付いた双子が首を傾げながら問い掛けてくるのでそのまま伝えれば、
ケラケラと笑いながら[きっとこたつ買ってくれるね]とヒソヒソと話をしていた。
「あ、パパおかえりー」
「おかえりー!こたつ、あったかかった?」
「俺は別にその為に出て行ったわけじゃないよ。ちょっと喉が渇いたから水を買いに行ってただけさ」
―――素直じゃないなぁ、本当……。
二人の満面な笑みに迎えられ、中に入ってきた臨也だったが特に何も変わらず、いつも通りの順路を辿った後、ソファに腰掛け、買ってきたらしい水を蓋を開けて飲んでいた。
できれば冬は外に出たくないとか言わんばかりの男が、わざわざこの寒い中外に水を買いに行くだけなんてあるわけがないので、思わずニマニマとした笑みが零れていると―――
「俺の言葉が信用できないみたいだねぇ?」
と僅かに鋭い目線でそう言うので[はいはい、そういう事にしておきます]と言う事を聞けば、まだ文句を言いたそうだったが息を吐き出して携帯でまた何かを見ている様だ。