折原家2
□初めてのお風呂
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『よし、じゃあもうちょっと探してお家帰ろっか』
「うん!」
――――――――……
新宿 某マンション
愛子視点
『ただいまー』
「ただいま!かえってきた!」
「おかえり、どう?お目当てのものは見つかった?」
「おかえりー!」
『全く。この玩具が見つかって懐かしくなったぐらい』
まだいないと思って鍵を開けると逆にしまってしまい、首を傾げつつもう一度鍵を開けるとドアが開き、
[もう帰ってきてるのかな]と思いながら中に入れば音と声に気付いた二人がこちらへとやってきて私達を出迎えた。
手に持った箱を見せながらそう言うと息子が[何が入ってるの?]と言いながら覗こうとしているので屈んで見せれば思い出したのか、懐かしそうに[これ覚えてるっ]と嬉しそうだ。
「じゃあ休憩して残りのマンションも探してみようか」
『うん!……でも、必要なものは一つに固めてた方がいいな、ってちょっと思った……色々なものが片寄ってるって言うか……あちこちに散乱してるって言うか……』
「君が全てのマンションの片づけをやってくれるなら俺は手を貸すし、喜んで鍵を渡すけど。そんな時間あるの?」
『……ない、ですね、はい。でもいつかは皆で片付けしようよ』
大きくなった佑梨や更に大きくなった双子達と一緒に。
そう言うと臨也は[面倒そうではあるけどね]と溜息を吐きつつちょっとだけ未来を想像し、口元を緩めている。
「愛子、帰ってきたなら代わりなさい。母親が居ないってさっきから泣いてるんだから」
『あ、すみません!……ごめんね、遅くなっちゃったね』
そんな雰囲気の中、奥にいた波江さんが娘を連れてちょっとだけ不機嫌そうな顔をしながら押し付けるようにそう言うので慌てて受け取り、
あやすように背中を叩けば落ち着いたのかお昼寝のように眠ってしまった。
「佑梨も一緒につれて行くって言うのはどうかな。いつまでも家の中って言うのもつまらないと思うしさ」
『そうかもしれないけど……ちょっと心配』
「過保護すぎるのも赤ん坊の身体によくないよ?それに後は新宿の方ばかりだから歩いて行けば問題ないしさ」
まだ小さく、免疫力だって弱いだろう赤ん坊を外につれて行くと言うのはとても心配な事で―――なかなか外に連れ出せなかったが、彼の言葉もほんの少しだけ納得できる。
―――それに……検診がもうすぐあるわけだし、そんな事も言ってられないよね……。
家に帰る時だって、検診の時だって結局外に出て動いていたのだから目が開き、よく動くようになった娘ならちょっとのお出掛けぐらいならいいかもしれない。
「いっしょにおでかけっ?!うれしい!」
「ぼくたちが見ててあげる!」
「こう言ってるんだし、毛布の一枚引いて枕を置けば頭が痛いとかそういうのはないんじゃない?」
『……うん、分かった。じゃあ初めてのお出掛けしよっか』
――――――――……
新宿 某高級マンション
愛子視点
『本当さ……パパは無駄に高級マンション持ちすぎなんだってっ』
「そうかな。粟楠会の四木さん達だって結構な数のマンション持ってたりするけど。俺より凄いんじゃない?」
『……あの人達と比べちゃダメ。ていうか、あの人達と比べないでよ……』
サラリと口を開き、何でもないとばかりの臨也に溜息が出てしまうが、昔から使っているマンションでもあるので増やして無いだけマシかもしれない。
子供達は横に寝かせた娘に夢中であり[は、まだちょっとしかないんだね]と覗くように口の中を見たり、髪の毛を撫でたりとやりたい放題だ。