折原家2
□初めてのお風呂
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子供達に事情を説明すれば狙っていた通り双子は大喜びし、[たからさがし、たのしみだね!]と言って早くやりたそうな顔をしていた。
そして組み分けも最初はどちらかは臨也で、どちらかは私だと言うと[ママがいいっ]といつものようにぐずったが、最終的にはじゃんけんをして娘が勝ち、私と筑紫がペアになった。
「それじゃあ、選んでくれるかな」
『う、うん』
目の前には手で隠され、先端しか見えなくなったマンションの鍵があり、見た目は全部一緒に見えるが細かったり太かったりと少しずつ違うようだ。
―――運試しってわけじゃないし……気軽に引いてもいいよね。
『それじゃあ……これっ』
「それは確か―――」
―――――――……
池袋 某高級マンション
愛子視点
『……無駄に広くない……?』
「広いねー」
住所と地図を頼りにやってきたのは池袋であり、その中でもかなり高い位置にあるマンションでオートロックを外し、
エレベーターで上がって中に入ればここを毎月のようにお金を払って管理しているのかと思うと目眩がした。
お金に余裕があるからといってこんなただ広くて高い所なんて必要ないじゃないかと思うが、昔は天敵である静雄さんに隠れるように行動していたのでその名残なのだろう。
―――もっと違う所を借りればいいのに……。
『じゃあ、何か大きな箱があったらママに教えてくれる?』
「うん、分かった!」
呆れながら、それでも本来の目的は双子が使っていたベビーバスなのでありそうな場所を二手に分かれて探す事となった。
―――懐かしー……二人が赤ちゃんの時に遊んでた玩具……。
殆ど物置のようになっているので様々な玩具や私が捨てきれなかった雑誌、彼が読んでいたであろう本が整頓されていたり、
そのまま置きっぱなしになっていたり、段ボールに入っていたりと様々だ。その全てに私と臨也が歩んだ時間があり、彼の愛情の塊があちこちにあって懐かしさを感じてしまう。
―――あ、これって臨也のお母さんが送ってくれた玩具……!
―――こんな所にあったんだ……。
今住んでいる所に片付けたと思っていたのだが、定期的に使わなくなった玩具以外のものを他のマンションに移したり、
売ったり捨てたりしているのでどこにいったと思っていたのだが、こんな所に片付けていたなんて臨也らしいと言えばらしいのかもしれない。
『ママのけいたいなってるよ?」
『え、あ、ありがとうっ』
それから数十分。
色々な懐かしい物が出てきてなかなかお目当てのものが見つからず、きちんと探さなきゃ、と気合を入れようとしていると娘がそう言って私の鞄を指さすので
臨也だろうかと思いながら携帯を取り出せば、予想通りの相手で[どう?進展は]と様子を聞きに来たようだ。
『懐かしい物が多くてなかなか見つけられないよ……』
[君ならそう言うと思ったよ。ある程度探したら一度戻っておいでよ。時間があれば他の所も一緒に探せばいいしさ]
『そうだね、そうしよ!あ、後……お義母さんからのプレゼントの玩具、持って帰ってもいい?』
[もう古いんじゃない?また孫の顔を見に来るとか言ってたから新しいの買ってもらえば?]
『いいよ、そんな。それに……何か懐かしくなっちゃってさ』
[でも後から佑梨にお婆ちゃんから私は玩具貰ってない、って言われたらどうするつもり?]
『うっ……じゃ、じゃあ……分かった。買って、ください……』
[最初からそのつもりだよ、俺も、母親もね。後、まあ君がその古い玩具で遊んであげたいって言うならいいんじゃない?持って帰れば]
何だか申し訳なくなってしまうのだが、双子達の時は貰って佑梨の時は断るなんて平等ではないのでオズオズと頼めば電話越しからでも分かる笑顔でそう返事を返し、電話を切った。