折原家2

□初めてのお風呂
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<初めてのお風呂>


新宿 夜 某マンション

愛子視点


『よしよーし、身体キレイキレイしましょうねー』


赤ん坊の身体を傷付けないようにタオルで拭いていく。

早く一緒にお風呂に入れればいいのだが、双子が使っていたバスタブのような容器はどこかに行ってしまい、新しく買い直すと言うのもなかなかに難しい。


―――夏になるし、そろそろきちんとしたお風呂で洗ってあげたいなぁ……。


場所も取るし、大きくなれば使わなくなる。

たった数ヶ月にお金を使うのも勿体ない気持ちも分かる。だが、身体を拭くだけでは可哀想なのでこちらを眺め、観察する旦那の方を向いてお願いする事にした。


「……そうだね、いくら汗を掻かない環境にいるからって言っても限界があるよねぇ。……じゃあさ、4人で宝探ししようか」

『……は?』

「だから宝探しだよ、宝探し。……少し待っててくれるかな」

『?』


何を思いついたのか、旦那はニヤリとした顔をしたかと思えば私達から離れてどこかへ向かい、戻って来た時には何か鉄の棒みたいなものを何本か持って近くに腰掛けた。


「ここに俺が借りてる全マンションの鍵がある。鍵でマンションの場所が分かるから君達は二人で1本を決めてそのマンションの中を探して見つけるんだ、双子が使ってたベビーバスをね」

『いやいや、ちょっと待って!見つからなかったらどうするの?』

「そうだな、諦めて買い直すよ。見つける前から新しく買うよりも、少しでも探した方が安上がりだと思わない?」

『ま、まあそうだけど……でも、全く思い出せないし……見つかるか……』


彼からしたら大した金額ではないと思うが、荷物の量が多くなり、本当に使う時になって物がいっぱいでした、なんて事を避けたいのだろう。


―――鍵の数は5本……二人で1本……。

―――2回しか探せないって事だよね……かなり確率低いんじゃ……。


「本当なら一人1本の方が確率は高くなるんだろうけど、4人中2人が子供だからね、仕方ないよ。後、言い忘れてたけどこの中のどれかはこの家の鍵だから」

『え、えええええっ』

「流石にそんなには必要ないよ。俺が昔隠れ家に使ってたり、仕事の為に使ってたような場所ばかりだから」


―――ひ、必要なものには本当、お金に糸目は付けないなぁ臨也は。


話をしながら赤ん坊の身体を拭き終わり、オムツなど変えたり、ボディクリームを塗ったりして服を着替えさせればちょっとだけ笑顔を見せる娘。

その顔がとても可愛らしく、この作業が一番好きな時間だったりする。それでも家賃やら維持費やらかなりお金がかかりそうなのだが、彼は何でもないとばかりにサラリと言い放ち―――


「どこの鍵かは引いた時に教えるよ。その方が面白いだろう?」


と楽しそうな顔で面倒臭そうな事を口にする。

確かに楽しそうではあるが、ちょっとだけ面倒だなと思う気持ちもあったりして。

それでも子供達もその方が楽しく探してくれそうなので、彼なりに家族の楽しみ方を考えてくれたのかな、なんて考えてもみたり。


「あ、だからってズルはナシだよ?君に預けてる家の鍵を見るなんてつまらない事、君はしないよね?」

『……はい』


ちょっとだけ後から見てやろうと考えたが、彼―――折原臨也にはお見通しだったらしく釘を刺すような強い口調でそう言うので、残念に思いながらそう返事した。


「ま、でもさ例えば君がここの家の鍵を引いたとしてもここなんて探してるわけだろう?だからもう一回チャンスをあげるよ」

『本当っ?!』

「そうじゃなきゃ見つけるなんてできないだろうからねぇ」


―――――――――……

翌日

愛子視点


『そ、それじゃあ……!』

「うんっ、ママがんばって!」


土曜日。

臨也と紫苑、私と筑紫に分かれて探す事となった。
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