折原家2
□ちょっとした未来
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新宿 夜 某マンション
愛子視点
「そろそろ俺達も寝ようか」
『うん、そうだね』
子供達も眠り、数十分後。
眠たそうな顔をしながら時計を確認し、声をかけてくる旦那に頷いて娘を抱き上げ、立ち上がる。
その間にも彼は戸締りなどを確認し、先に上がっていくので私も置いていかれないように、
それでも腕の中にいるまだ赤ん坊の子供を落とさないようにしっかり抱きしめながら階段を上っていく。
「たまには俺が抱っこして連れて行ってもバチは当たらないと思うけど?」
『まあそうだけど……何、抱っこしたいの?』
「たまにはね。こういう時って本当に一瞬だろう?」
『まあそうだね。あっという間に二人みたいに大きくなっちゃうよ』
上がりきった所で旦那がそんな事を言い出し、両手を差し出してくるので小さく笑いながらゆっくりと娘を渡せば
ちょっとだけ覚束ない手つきで受け取り、安心させるように背中をポンポン、と叩いた。
「少し大きくなったんじゃない?」
『まあ生まれた時よりはね。だいぶ髪の毛もフワフワしてきたし……赤ちゃんらしいって感じ』
「この子が気付いたら俺の事をパパって呼ぶようになるんだねぇ。今さらだけどまだ3人の子持ちって実感がないよ」
『え、今更すぎだよっ!何回も抱っこしたり、泣き止ませたりしてるのに……』
「そうなんだけどさ、ほら、ふとした時に思わない?実は4人だったんじゃないかって」
『思いませんっ、それよりもあの子達がちゃんとお兄ちゃんお姉ちゃんをやってくれるのか心配』
今だって十分兄、姉の役割を果たしてくれていると思うが、大きくなって今隣でスヤスヤと眠っている娘が[お姉ちゃんのがいい]などと言ったら二人はどうするのか、それが心配だ。
口では[ゆずるよっ]と自信満々に口にしていたが、実際はどうなのだろう。
―――まだ分からないからなぁ……。
天使のような寝顔で、悪魔のように泣き、私達を困らせる赤ん坊なので想像もつかない。
「大丈夫じゃない?俺はあの子達を信じてるよ」
『そうかなぁ……。私は張り合って喧嘩しそうだけど……』
「……それもありえるね。前に君が佑梨を可愛いって言ってただけで嫉妬してたしね」
前の事を思い出したのか、苦笑する臨也。
『そうなんだよなぁ……。……ここは父親の臨也がどうにかしてねっ』
「……父親だって限界があるよ。俺は俺にしかできない事に全力を尽くすよ」
『えええ……。……まあ、その時考えればいいや。それじゃあ、おやすみ』
「そんな出たとこ勝負みたいな事をしてると後で痛い目に遭うよ。……おやすみ、良い夢を」
そんな―――臨也の独り言を聞きながら意識を沈めて行く。きっとそう言いながら彼なら何とかしてくれる、そう思いながら。
―――――――……
愛子視点
「ママ、おきてっ」
『ん……もうちょっと……』
「やーだっ、おーきーてーっ、きょうおさんぽいくっていったっ」
『そうだっけぇ……?……っ?!えっ、ちょ、待ってっ!?……もしかして、佑梨っ!?』
「?うん、そうだよっ、ママ!」
聞き覚えのない声が聞こえる。
さっき寝たばかりなのにもう起きなければいけないのか―――そう思いながら、眠たい目を擦りつつ、
目を開け周りを見渡せばほんの少し変わった室内と隣で寝ていた旦那の姿と赤ん坊の娘の姿が無く、
代わりにどことなく私の面影を残し、それでも旦那―――折原臨也の顔に似た小さな子供が私に向かって声をかけていた。