折原家2
□家の子が一番
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『顔はどっちかなぁ、こうなると私と臨也を合体させたような……いや、想像したらちょっと怖い』
「そっくりそのまま合体するわけじゃないんだから大丈夫じゃない?ていうか、俺と君の顔を合体させるなんて考える方が俺は怖いけどね」
『えええ、ほらだってさ?目の色がこんな色だよ?という事は……みたいな』
大きくなった時、この子はどちらに似るだろうか。
今は赤ん坊であまりどちらに似ているというのは分からないし、年を取れば双子のように私に似ている部分、臨也に似ている部分が出てくるだろう。
―――顔はやっぱり臨也には敵わないからなぁ。
整った容姿。
それだけはどう頑張っても辿り着けない。化粧や服などで誤魔化す事はできてもそれは見せかけで、どこかで必ずバレてしまう。
なのでできるだけ顔は臨也を受け継いでほしいが、臨也は[君に似てたらいいねぇ]と嬉しそうに笑った。
『えええ、何でー?』
「俺は君の顔も好きだからね。好きなものはたくさんほしいっていう人間の気持ちは理解してるつもりだよ?」
『……っ、わ、私は臨也の顔に似てたらいいなって思うよっ』
―――臨也みたいな理由じゃないけど。
「……まあいいじゃないか。時が経てば分かる事だ、気長に待てばいいさ」
『そうだね。……可愛いねぇ、パパが気になるかなぁ』
私達がそんな会話をしていると娘は父親の顔をじーっと見つめ続けており、何を見ているのか気になって私も横になって臨也の膝に頭を乗せた。
「……何やってるの?」
『赤ちゃんの世界が見たくなった、みたいな?』
「……別にいいけど、こんな事するなんて初めてじゃない?」
『あ、言われてみれば。臨也の腿―』
頬ずりするように臨也の膝に頬をくっつければ、[下ろすよ?]と冷たい声が聞こえたので一瞬でそれを止めて、旦那の顔を下から見つめてみた。
―――鼻高っ、まつ毛ながっ、イケメンは下から見てもイケメンっ
―――……あ、こっち見た。
「何か解った?」
『え、うーーーん……まだちょっと時間かかるかもっ』
「そう」
何も分かっていないのだが、適当な理由を付けて彼の膝の上に頭を乗せ、赤ん坊と臨也を交互に見る私。
こうやって膝の上で寝ているなんて贅沢、臨也の事を顔で判断するような女の人が見たらどう思うだろうか。羨ましがるだろうか、それとも嫉妬の炎を燃やすだろうか。
考えるとちょっと怖いが、彼が膝の上を許してくれたのは私なので口元を緩めつつ、膝の上で頭を置き続けた。
「いつまでこうしてるつもりなの?」
『えー?いつまでもー。ていうか、洗濯が終わるまでかなぁ』
「長くないかな。それなら俺だって君の膝の上で横になる権利ぐらいあると思うけど?」
『臨也も味わいたくなったの?赤ちゃんの気分』
「その言葉には語弊があるよ。別に俺は赤ん坊の気分を味わいたくて言ってるわけじゃないし、我慢してたとかそういうのじゃないから」
『……あ』
「?」
『ごめん!全然気づかなかった!いいよ、ほら、私の膝の上いーーーっぱい横になって?』
言葉の端で彼の本音が見え隠れしたような気がして、察するようにゆっくりと起き上がって膝をポンポン、
とすると不審そうにしながらも子供が落ちないように気を付けつつ、私の膝の上に横になった。
『パパは赤ちゃんになっちゃったのかなー?おっきい赤ちゃんですねー』
「……そのうち君、赤ちゃん言葉とか使いそうで怖いよ。流石に俺もそんな言葉は使わないよ?」
『私だって使わないよっ、臨也は寝ぼけた勢いとかで言いそう』
彼は寝ぼけると、かなり素直になる。