折原家2

□今年は何をしよう
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『パパは優しいねー』

「ねー」

「いっぱいおはなししてくれるもんね」

「それはお前達が無視するとうるさいからだろう?俺はこれでも忙しいんだ」

『それでも付き合ってくれるパパは優しいよ』


彼ならどうとでも対処できるのに、知らん顔をする事だって[俺は忙しいんだ]と言えばいいだけなのに―――

ニヤニヤした顔でそう言えば、僅かにげんなりした表情を浮かべつつ[君だけだよ]と呟いた。


「パパー、まだきゅうけいしない?」

「つかれちゃうよ?」

『パパは集中したら凄いからね』


それから双子は自分達のやりたいように過ごしている間、臨也はパソコンを見ながら何か作業をしているらしく、こちらの声に反応せず黙々と手を動かしていた。

そんな父親を見て双子は心配になったらしく、私に向かって問いかけるがいくら私が言った所で忙しいと言っている彼がわざわざ休憩してくれるとは思えず、

小さく息を吐きつつコーヒーを淹れて机に置くと気付いたのか[ありがとう]と短くお礼を言ってくれた。


『大変?』

「言っただろう?ある意味大変だってさ。……それで何か用?」

『ええと……パパ、休憩しないのかなぁって』

「……休憩?もうそんなに時間が経ってた?」


雑談の時間はないかもしれないが、ずっと作業していると集中力も途切れてしまうのでほんの少しでもゆっくりしてほしくて―――

他愛もない言葉をかければまさか自分がそこまで集中しているとは思っていなかったようで僅かに驚いた表情をしていた。


『うん、もう2時間ぐらいずっと無言で作業してたよ』

「そう。それじゃあ少し休憩しようかな」

『うん』


身体を伸ばし、ゆっくりと息を吐き出す臨也。

頑張っているのは知っているし、きっとこれも自分の誕生日を楽しめるように計画しているのだろうと考えれば多少の無理は目を瞑るしかないのかもしれない。


「パパ、かた、たたいてあげよっか?」

「母の日のつぎは父の日だもんね!」

「……これが父の日のプレゼント、なんて言ったら止めてもらうけどね」

「言わないよっ、そんなにケチじゃないっ」

「ちゃんと父の日は父の日でかんがえるよ!」

「そう、それならいいけど」


―――貰う気満々、っていう所が可愛いなぁ。


椅子に座ったまま時々時計を確認し、コーヒーを啜ってのんびりと座っている父親に二人は手伝う気満々な顔でそちらへと寄って行き、父親に問いかければ確認するように口を開く臨也。

そんな事を言わなくても双子はきちんと考えてくれているだろうし、私もどんなものをプレゼントしようか考えている最中だ。

確認が取れた事に安堵したのか、肩が叩きやすいようにソファへと移動すれば、双子も後ろからついていき、片方ずつ担当するようだ。


「いやあ、こんな風に肩を叩いて貰うと何もしたくなくなっちゃうね」

「何もしなくていいのにぃ」

「パパはここにいればいいのにぃ」

「そうはいかないさ。俺はこれでも一家の大黒柱だから、サボってるわけにはいかないんだよねぇ」

「はしらだってきゅうけいしたいよって思ってるよ、ぜったいっ」

「はしらだからって休んじゃダメっておかしいよっ」

「……そうだね、そう思ってるかもしれないねぇ」


トントン、と叩いたり、肩を揉んでいる中でそんな会話が聞こえ、双子の意見に賛成している自分が居た。

彼の貯金状態がどうなっているのかなんて3人が不自由なく高校や大学が出られればそれで充分なので考えた事も無かったが、臨也にとっては趣味でもあるのでそれも難しいのだろう。
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