折原家2
□新しい命
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なのでたくさんゆっくり寝て欲しいが、納得できない部分もあるので結局二人して寝不足な顔で双子や子供の世話をしなければならない。
『はいはーい、どうしたのかなぁ』
「お姉ちゃんがいるからだいじょうぶだよー」
「お兄ちゃんもいるよー」
そんな会話をしていると起きたのか、耳に響く泣き声が聞こえ、身体を優しく摩りながら問い掛けるが答えるわけもなく、
ただただ泣き続けている我が子を宥めているとフラフラと眠たそうな臨也が2階から下りてきて[お腹空いたんじゃない?]と欠伸混じりで口を開いた。
「パパ、おきるの早いね」
「ママ、さっきねたって言ってたよ?」
「寝てたよ。でも不思議なものでさ、泣き声を聞いたら自然と起きちゃってね、そのまま下りてきたのさ」
『流石パパ。しかも子供が欲しがってるものも当てちゃうなんて流石だね』
「たまたまだよ。最後に飲んだ時間を考えたらそろそろお腹を空かせる頃かな、ってね」
言われるままに、ダメもとで消毒をして口元に当てる様にすれば痛いと感じる程に吸い付き、懸命に栄養を取ろうとしている姿があった。
そんな姿を4人で見つめていると臨也が[俺が預かるから君は少し寝てこれば?]と提案してくれた。
『でも、大丈夫かな……』
「たくさん飲めば少しは落ち着くんじゃないかな。そうすれば君だって1時間もないかもしれないけど寝ていられるだろう?」
『そうかもしれないけど……パパだって全然寝てないじゃん』
「俺は平気だよ。それに寝ようと思えばいくらだって寝られるんだ。けど君は違うだろう?だから寝られる時に寝ておけばいいよ」
『パパ……』
自分だって殆ど寝てないのに、仕事だって残っている筈なのに―――私に優しい言葉をかけてくれる臨也に泣きそうになりつつ、背中をポンポンと叩けば大きなげっぷをしたのを確認し、
またウトウトと眠り始めたのでそれを見計らって彼に渡せば起きるかと思ったが静かなままなので息を吐き出し、ソファに横になった。
「こんな所で寝たら風邪引くよ?」
『だって心配だし……泣いたらすぐ起きれるようにしないと』
「……俺が信用できないの?」
『できるよ。ていうか、してる。でもそれとこれとは別だと思う。トイレ行った時に泣いたの、忘れたの……?』
ほんの数分、トイレに行く為に臨也に抱っこさせて行っただけなのに帰って来た時には大泣きで―――
彼もあやすように身体を揺らすが全く効果なく、困った顔をしながら私を見ていた時があった。
「今ならもう少し上手くあやせる自信があるよ。それに今は子供達も一緒だからね」
『そ、そういう問題なのかな……』
「だから心配せずに上で寝てきなよ。本当に困ったら呼びに行くからさ」
『……。……分かった、ちょっと心配だけど寝てくるね』
そこまで言ってくれるのだから―――そんな気持ちが芽生え、お言葉に甘えて立ち上がり、2階へと上がっていく。
―――ゆっくり眠るんだよ。
臨也視点
「もし何かあったらお前達も手伝うんだよ?」
「分かってるよ、ママとやくそくしたもん」
「でも、パパの方がいいのかな。すっごく嬉しそう」
「どうかな、まだ俺に抱かれてる事に気付いてないだけかもね」
寝ぼけ眼で赤ん坊を抱っこし、ソファに座れば双子は同じように俺の周りに集まり、小さな声で見つめている。
とても緩やかな時間。
本来なら俺も書類整理などの雑務をこなしている所なのだが、有能な秘書が―――
「貴方のその顔を見ると文句を言う気も失せるわ。落ち着くまでは愛子の役にせいぜい立つ事ね」
と言われたので俺自身が必要な仕事以外の仕事は全て波江さんに任せ、俺はこうやって腕の中で眠る3人目の娘の頭を優しく撫でている。