折原家2
□新しい命
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少し時間が経った後の話です。
<新しい命>
新宿 某マンション
愛子視点
「赤ちゃん、かわいいねー」
「ちっちゃいね」
『そうだね、本当にちっちゃい』
ずっとお腹の中で育ってきた子供が、外の世界を飛び出し、私達の家に来た日。
子供達は大喜びし、旦那も[お疲れ様]と言って私と赤ん坊を優しく抱きしめてくれた。そんな感動の再会と言ったら大袈裟かもしれない日が過ぎた翌日から
双子は抱っこする私の周りをウロウロと何かしたそうな顔で歩いており、こちらをチラチラと見つめ、
それでも僅かな不安を覗かせている姿を見て、もしかしたら抱っこしたいのかも、そう思った。
それならば兄、姉になったので自分も年上として妹を抱っこしたい、でも落としたらどうしよう、という葛藤が生まれてもおかしくない。
そんな様子を見て、私は起こさないように注意を払いながらソファに腰掛け、双子に見せるようにすれば、恐る恐ると言った感じで髪の毛や手などを触っていた。
「赤ちゃん、たいへん?」
「ママ、ねむたそう」
『大変だよー。お腹空いたよーって泣くし、ちょっとした事でも泣いちゃうから気が休まらないって言うか……それでパパなんてついさっき寝たぐらいだし……』
「そうなんだー。ママもパパもたいへんだね」
「早くおはなしできるといいのにね」
『そうだねー。まだ喋れないから泣くしかないのは分かってるんだけどね……』
赤ん坊と言うのはとても大変で―――ほんの数分で起きる時もあれば、数時間たっても静かに寝ている事もある。
その時は息をしているか物凄く心配になるが、気持ち良さそうに眠っている姿に安堵し、たくさん寝てね、と頭を撫でて私も少し眠る。
同じ部屋で寝ている旦那は分かっていた事だと言っていたが、流石に寝不足には耐えられなかったようで赤ん坊が眠った隙に物音すら感じない程に深い眠りに落ちたようだ。
その時は僅かに申し訳なくなったが、私だって眠れないのだからと思えば、眠っている旦那の顔を抓って[臨也のバーカ]と呟いたものだ。
「ぼくたちが見ててあげるって言っても、ママたいへんだよね」
「しんぱいになっちゃうよね」
『うーーーん、まあね。ちょっと心配かな……』
見ててくれるのならば見てて欲しいのだが、まだ小学生と言う気持ちもあり、不安が大きい。
確かに既に高学年となる双子なので大丈夫だとは思うし、信用もしているが何かあってからでは遅いし、後悔はしたくない。
それを分かっているのか双子は[もっと大きくなったらママのおてつだいできるのにね]と残念そうに呟いていた。
『そんな事ないよ、二人はすっごくママのお手伝いしてくれてるし、助かってるよ』
「本当っ?」
「おてつだいできてる?」
『うん、こうやって喋ったり、気遣ってくれるだけで助かってるよ』
これがもし一人だったら―――きっと私は一人で泣いていたかもしれない。双子の時は旦那が傍にいて気を遣って、時には秘書の波江さんが傍にいて、支えてくれた。
旦那―――折原臨也だって今でも気を遣ってくれるし、付き合ってくれるし、支えてくれているが双子がこうやって私の傍で笑顔で話しかけ、
手伝えない事を残念に思ってくれているだけで100倍ぐらいの元気を貰っているような気がするのだ。
「そっかー、それならよかった!でも、パパもたいへんだねー」
『絶対大変だよー?仕事しながら赤ちゃんの泣き声聞いて、寝ながら赤ちゃんの泣き声聞いてるんだから』
「とーとが一番たいへんだね」
『本当だね。仕事してるからゆっくり寝て欲しいんだけど……』
信用第一の仕事。
寝不足でミスしました、なんてそんな社会では通用しない。