折原家2
□色々詰め合わせ
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かなりの力作と言ってもおかしくないレベルのケーキに大満足しつつ、用意してあった入れ物に1ホールごと慎重に中に入れ、ラッピングしていく。
「……ねえ、本当にシズちゃんにあげるの?」
『ならパパ、これ食べる?ここの部分だけじゃないよ?1ホール全部』
「…………」
『食べられないでしょー?パパ、甘いの好きじゃないもんねー?』
そんな中、臨也は何を思ったのかそう言いながら私達の所に来たので挑発するようにそう言えば、何とも言えない表情をしながら箱に入ったケーキを見つめていた。
「……君が食べろって言うなら食べるよ」
『ええええ……後が怖いからいいよ、吐かれても困るし……』
「ママがあとでパパのためにあまくないケーキ作ってくれるってっ!」
「それでがまんしなきゃダメだよー」
それから数分。
あれこれ考えたのか、そう言うので意外な答えにこちらの方が驚いてしまい、次に何て答えようか考えている間に子供達が慌てながら言えば、
[シズちゃんに食べられるなら俺が食べるよ]と本気で食べようとする臨也。
『い、いいからっ、後で辛い思いをするのはパパなんだよっ?!それにこれ、甘党の静雄さんに合せてあるから、絶対パパ、気持ち悪くなるよっ!?』
「それぐらい覚悟の上で言ってるんだよ?俺はシズちゃんに食べられるぐらいなら気持ち悪くなっても食べる、ってね」
『やーめーてーっ、パパは後で我慢して―』
「いつもそう言ってシズちゃんに渡しに行くじゃないか。それでいつまで経っても帰ってこないしさ」
『うっ……』
毎年静雄さんにケーキを作って渡しに行き、そこであれこれ話し込んだり、遊んだりしていると帰るのが遅くなって―――後でのケーキが翌日になる事もある。
臨也はそれが気に入らないらしく、[それならセルティに頼めばいいんだよ]と携帯電話を取りに行こうとしていた。
「シズちゃんに会いたいっ」
「しずおさんとあそびたいっ」
「今年は我慢しなよ。それに会いたければいつでも会えるだろう?わざわざ誕生日に会いに行かなくてもいいじゃないか」
「たんじょうび、おめでとうって言いたいっ」
「おいわいは一年に一回しかできないよっ」
「別にアイツにわざわざ言いに行くような事でもないだろう?それにお前達が行かなくても、他の誰かがシズちゃんを祝ってるさ」
―――それは、そうなんだけど……。
私達がわざわざ会いに行ってお祝いしなくても、田中さん達がきっとお祝いしてくれる。もしかしたら既に誕生日パーティーの計画が練られているかもしれない。
彼の言っている事は確かだが、それでも―――私達だって静雄さんの知り合いで、友人なのだ。一年に一回ぐらいプレゼントを持って[誕生日おめでとう]と言いに行きたい。
『ゆっ、許してくれないなら明日からパパと一切話をしないからねっ!』
「なっ」
『本気なんだからっ!』
「ぼ、ぼくだってっ、とーととお話ししないよっ」
「あたしもっ!知らんかおするからねっ」
「…………」
許して貰う為に、ある意味反則のような手を使ってそう言えば、あからさまな動揺が顔に浮かんでおり、
子供達もそれに釣られるように[パパなんてきらいになっちゃうんだからっ]と続けざまに攻撃する。
流石にそこまで言われ、家族全員から無視されれば臨也も辛いものがあるらしく、[何で俺が]とぶつぶつと文句を吐き出している。
『……ごめんね、でも一年に一回だけパパが許してくれれば私達はパパの事、見直すし、大好きなのがもーーーーーーっと大好きになると思うけどなぁ』
こんな事で彼が考えを改めるとは思えないが、それでもそう言わなくてはいけない気がして―――きっと彼にも色々ある。