折原家2
□その後の続き
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しかもそれは業者の人が持ってくる物なのでこの家にも、他の臨也が使っているマンションにも脚立と言うものはないだろう。
『……でも、それならどうやって貼るの?』
「?テープではるんだよ?」
「?ペタって。ママどうしたの?」
「ママはね、お前達が窓に貼るって言うから、心配してるんだよ。椅子や脚立でも使って貼るんじゃないか、ってね」
「そっかー。でも、だいじょうぶだよ。あぶないことしたらパパにおこられちゃうっ」
「とーとうるさいもんねー」
「うるさいって言うのは親に言うのはどうかと思うけど、まあ口を酸っぱく言ってるからお前達にはうるさく感じるのかもね。
まあ、俺もお前達が危ない事をしようとすれば怒るし、二度とこの家でパーティーなんてさせないだろうね」
―――……流石臨也……。
この部屋の主は臨也で―――私達はある意味、住まわせて貰っている、という立場になる。まあ彼がそう思っているかは謎だが、決める権利ぐらいはある筈だ。
臨也がダメだと言えばダメだし、許可をすれば危なくない範囲で遊ぶ事ができる。
「パパはズルい……。すぐそう言えばあたしたちがしたがうと思ってるんだ……」
「そんな事はないよ?じゃあ聞くけど、お前達は怪我をしても病院にも連れて行かない親と、連れて行く親、どっちがいいの?」
「……つれてってくれるママとパパがいい……」
「ぼくも」
「そうだろう?俺達はその親だと思うし、大体の親はそうだと思うよ?だからこそ、心配もするし、怒る事だってある。
でも、子供ってなかなか言う事を聞いてくれないだろう?危ない事をしちゃダメだ、
変な人間にはついて言っちゃダメだ、って言ってもさ。だから制限するんだ。こうしたらこうなるよ、って。……おかしい事かな」
僅かに返答に困った顔をしながらそういう臨也。
彼だって好きで怒るわけではない。寧ろ、怒る姿なんて見ないぐらいだ。いつも笑顔を崩さないし、今だって淡々とした口調で、表情は変えながらもそう言って二人に話しかけている。
だが、それでも二人は納得できない事があるらしく、父親に向かって口を開くが、簡単に言い返され、[おかしくない]と小さな声で聞こえてきた。
『パパはね、二人の事がすっごーーーーーっく、心配なんだよ?だからパパ、仕事もしないでここで私達の事を見てくれてるんだよ』
「……その言葉にはかなり語弊があると思うんだけど。仕事もしないで、って言うけど俺に今日、どれだけの仕事があるのか解ってるの?」
『いつもの姿を見てれば……そうだな、半分は残ってるねっ』
「不正解だよ。正解は殆ど手を付けてない、かな。まあ急ぎじゃないし、相手が動かないと俺も動けないから連絡待ちって言った方が適切だけどさ」
『だってさ。ね?パパは心配で心配で仕事も後回しにしちゃうんだから、あんまりパパを虐めないであげてね?』
「……うん、ごめんね、パパ」
「とーとはぼくたちの事、大すきなんだね」
朝から殆どいつもの席に座っていないので多分そうだろうな、とは思っていたがまさか当たっているとは思わなくて―――
それでも念の為にそう言えば、まるで子供達は関係無い、とばかりに口を開き、絶対に[二人が心配だから]とは言わない。
なので私が口にすれば、[何で言うかな]とばかりの顔をしながらこちらを見つめており、あまり言われたくなかったらしい。
『パパは自分の本音は隠す人だからね。言わなきゃ伝わらないかなって思って』
「伝わらなくてもいいよ。子供は親を超えるものだ。それが早いか遅いかの違いなんだから」
『私は伝わって欲しいなぁ。パパはすっごく、私の事も子供達の事も大好きだって教えてあげたい』
人間としてかもしれない、本当はそれすら見てないかもしれない。
それでも―――心配したり、構ってほしそうな顔をする臨也が私は大好きだ。