折原家2

□その後の続き
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既に機嫌は良くなっている様だが、それでも[構って構って]とばかりに話しかけてくる姿がとても愛らしい。

きっとこういった姿も、私達のように臨也の傍に何十年もいたからなのだと思うとご褒美のようにも思えてくる。


―――まあ、たまに鬱陶しくなるけど……。


『ねえ、もうプレゼントは用意してあるの?』

「勿論だよ。ていうか、今日がイヴなのに用意してなかったら、俺がこんな所でのんびりしてるわけないだろう?」

『まあね。でも、パパって案外のんびりしてる所あるから……』

「そうかな。のんびりしてるように見えて、これでも結構あれこれ動いてるんだよ?……白鳥の湖って知ってる?

白鳥ってのんびり泳いでいるように見えて、水面下では懸命に泳いでいるんだ。俺もそれに似たようなものさ」

『……すっごく裏では頑張ってるって事ね……』


今回は[俺が準備するから]と言って私は特に関わっておらず、双子が何が欲しいのかすら知らない。

話せば教えてくれるかもしれないが、小さい時から[サンタさんにしか教えない]と言って口を堅く閉ざし、親ですら欲しい物や靴下の隠し場所すら教えてくれなくて―――

子供達の小さな靴下の捜索から入るのが恒例になっている。まあかくれんぼが下手なので、大体は枕の下か、ベッドの下に押し込むような形で入っているのだが。


「パパー、これきってー」

「これをこうやってきってー」

「……難しい注文をするね。もし俺がハサミも使っていいよって言ってたらどうしてたつもりなの?」

「あたしたちがきるよっ、だってあたしたちがやるんだもん!」

「でも、とーといやでしょー?だからとーとにもおしごとあげるっ」


苦笑交じりに口を開き、彼の言葉を簡潔に口にしていると子供達がハサミと折り紙、そして本を持ってこちらにやってきて―――

切って欲しいページを捲り、父親に説明すれば僅かに顔を引きつらせている臨也の姿があった。

器用な彼が顔を引きつらせているものとはどんなものかと興味があったのでそちらへ視線を向ければ、

かなり複雑な飾りとなっており、本当に折り紙とハサミだけでできるのかと思うようなものが書かれていた。


―――ふ、二人ができるとは思えない……。


臨也ですら引きつるような顔だ。

子供達からしたらかなり難易度が高いと思うのだが、自信満々に[あたしたちがやる]と言うので思わず心の中で呟いてしまった。


「……まあできる限りの事はやってみるよ。でもできなくても文句は言わないでね?」

「分かってるよぉ!できたらおしえてねっ」

「あそこにかざるんだからっ」

「あそこか。まあいいんじゃない?怪我だけはしないようにね」

「「はーいっ」」


双子が指さしたのは大きな窓であり、一番メインとなる場所だろう。

いくら臨也の背が高くても窓の方が何倍も高いのであの一番上の方には届かないと思うのだが、子供達なら[あそこにはりたい]と言い出しかねない。

念の為、[高い所には貼れないからね]と言えば二人は分かったような顔をしながら[だいじょうぶだよ]と笑う。


―――流石にそんな危ない事、しないよね……?


「変な心配しなくても大丈夫だって言ってるだろう?ていうか、この家に脚立なんてものがあると思ってるの?」

『あ、そっか……なかったら貼れないもんね』

「そういう事。いくら二人がお願いした所でできないんだよ。あそこに貼る事なんて、俺達にはさ」


ずっとこの家で過ごしてきたが、天井に手が届きそうなぐらい、大きな脚立なんて見た事がないし、時々臨也が業者を呼んで天井や窓を掃除して貰う時ぐらいしか使う事もないだろう。
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