折原家2

□甘酸っぱい青春
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「ほんとっ!?じゃあ、わたしのことは陽ってよんでね!……紫苑君ってよんでもいい……?」

「うん、いいよ。じゃあまた明日ねー」

「う、うんっ」


――――――――……

数十分後 某マンション

愛子視点


「ねえ、ママー」

『ん?どうしたの?』

「今日ね、女の子にこくはくされたっ」

『!?ま、マジで……?』


確かに息子は旦那に似て顔もいいし、運動神経もいいので小学生の女の子には人気なのかもしれないが―――

まさかこんな風に告白される日が来るなんて思わなくて、思わず持っていた雑誌を落としそうになってしまった。


「まあ紫苑も高学年になろうとしてる歳だし、彼女の一人や二人、不思議じゃないんじゃない?今の子は早いらしいよ?」

『そ、そうだけどっ!何か……何かっ』

「ママ、さびしいんでしょーっ、あたしもさびしいもんっ」

『寂しい……うん、寂しいかも……』


どんな言葉が自分の心にピッタリなのか思いつかなくて―――言葉を探すように地団太を踏んでいると娘が全く寂しそうな顔をせずにそう言うので、

少し違う気もするが、似たような感情なので納得すれば、[ママもさびしいんだね]と困った顔をする息子。


「でも、だいじょうぶっ、まだともだちから、って言ったから!」

『それは、大丈夫って言うの……?』

「まだ男女の恋愛感情はないって事だろう?まあそう言って、そのうち彼女を家に連れてくるんじゃない?」

『パパっ!?何でそう、不安にするような事ばかり言うのっ?!』

「早いうちから心を決めておいた方が、後からのダメージが抑えられると思ったからさ。

じゃあ、知らないうちに紫苑が彼女を作ってて、しかもその彼女が子供を妊娠してたらどうするつもり?」

『な……っ、そ、そんな……っ』

「ママがかたまってる……」

「とーと、ひどいこと言ってるー」

「例えば、の話さ。しかもこれは他人事じゃない、お前達の話なんだよ?こういうのは手順を踏んでもらわないと俺達も困るって事さ」


自分の息子に限ってそんな酷い事は―――そんな事を考えたが、どこでどういう人生を送るのかなんて分からない。

自分はそんなつもりはなくても、一回の行為でできてしまう事だってあるだろうし、彼女が息子を繋ぎ止める為に嘘を吐く可能性だってある。


―――そんな汚い世界には行ってほしくないなぁ……。


自分の息子だから大丈夫、なんて保証もない。

だからこそ、私は二人の話を真面目に、真剣に聞いてあげる事しかできない。それで二人の心が[ママになら話そう][ママなら信用できる]と思ってもらえれば、幸いだ。


「てじゅんって、どんなてじゅん?」

「できちゃったけっこんは、ダメって事?」

「ダメってわけじゃないさ。それも一つの愛だろうし、お互いがそれを認めて受け入れるならそれでもいいんじゃないかな。ただ、子供ができたからには、相応の覚悟がいるって事さ」

「……パパもかくごした?」

「いやじゃなかった?」

「そりゃあ、覚悟しなきゃ俺はここでこうやってお前達と話をしてないと思うよ?……まあ、今は覚悟して良かったと思うよ。こうやってお前達の人生を間近で観察できるんだから」

『……パパ……』


旦那―――折原臨也の言葉に双子にも色々な思いがあるのだろう。

まるで、父親の引いた線をゆっくりと足を踏み入れるように問いかければ、ニコリと笑って返事を返し、その言葉に私まで安堵してしまった。
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