折原家2

□甘酸っぱい青春
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<甘酸っぱい青春>


新宿 某小学校

視点なし


「お、折原君……っ」

「?」

「わ、わたし……あの……」


小学校の校舎裏。

あまり人の出入りがなく、こういった呼出には最適な場所であるここに二人の男女が立っていた。

一人は頬を赤らめ、どうやって自分の気持ちを伝えようかと考えている女子生徒と、何故自分はここに呼び出されたのか分かっていない男子生徒だった。


事の始まりは休憩時間に友達に連れられ、男子生徒の前にやってきた女子生徒は[よ、読んでくださいっ]と手紙のような紙を渡され、そのまま逃げるように去っていった。

それに釣られるように、追いかけるように友達も[ちゃんと行ってあげてねっ]と言い残して走って去ってしまい、残されたのは女子生徒が置いて行った手紙と男子生徒数人だった。


「紫苑、またこくはくかー?」

「いいよなぁー、顔がいいとモテるんだろー?」

「しかも、うんどうもできるから女子にはすっげー人気だしな」

「うらやましいっ」

「もしかしたら、こくはくじゃないかもしれないよ?何か言いたい事があるのかも……」

「ぜったいこくはくだろっ」

「かけてもいいぜっ」


そんな友人達の会話が続いた放課後。

書かれた場所に行けば、手紙を渡してきた女子生徒が一人立っており、[き、来てくれたんだ]と今にでも嬉し泣きしそうな声で男子生徒を見つめていた。

ほんの少しだけ、姉が[ママとパパがまってるよっ]という言葉に惹かれ、行くのを止めようかとも思ったが、

後でどんな事を言われるか分からないのでとりあえず話だけでも聞こうと姉の言葉もそこそこに学校に残り、この校舎裏へとやってきた男子生徒。


「どうしたの?」

「ええとっ……ご、ごめんなさいっ、きんちょうして……その……」

「きんちょうしなくてもいいよ?おちつけばだいじょうぶ」

「う、うん……」


先程から[ええと][その]と言い続けている女子生徒に男子生徒は早くしてくれないかな、と思いつつ声をかければ、

ビクッと身体を震わせ、今度は本気で泣きそうな顔で謝るので自分が悪い事をしたと思い、優しく問いかけた。


「その……手紙なら、言えるんだけど……ちょくせつ話したくて……でも、ちょくせつだと、すっごくきんちょうして……ごめんね」

「ううん、だいじょうぶだよ。それで、話したい事って何?」

「っ……そ、そうだよね。そのために折原君、来てくれたんだもんね……」


目をあちらこちらに動かしながら、直接男子生徒を見ないように話していれば、まるでナイフで刺すかのように

直球で女子生徒の言いたい事について問いかけるので、また身体を震わせ、どうしたらちゃんと言えるのかな、と言わんばかりだ。


「ええと……そのね、わたし……折原君が、すっごくカッコイイと思う……。たいいくもすごいし、

べんきょうもできるし……顔もカッコよくて……それで……いつの間にか……わたし、折原君の事……すっ、す……すきに、なっちゃったの……」

「ぼく、君の事知らないよ?」

「そ、そうだよね……っ、知らないのは、しかたないよっ!ええと……わたし……折原君のとなりのクラスの、花山陽(ハナヤマ ヨウ)って言います……ともだちからでいいので、おねがいします……っ」


あわあわと言葉を続ける女子生徒に男子生徒は首を傾げながら問い掛けるので頭を下げたり、あたふたと動き回り、

そんな様子を見て男子生徒はふと、母親も父親に対して、いつまでもあわあわと慌ただしかった、と思い出し、[まあともだちなら]と言った。
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