折原家2
□その日の時
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注意書き
色々とツッコミどころは多いかもしれませんが、長い目で見て頂けると嬉しいです。
<その日の時>
新宿 昼 某マンション
愛子視点
『…………』
「そんなに真剣にテレビを見て、どうしたの?」
一通りの家事が終わり、お昼ご飯も食べ終わったのんびりとした時間帯。
何気なくテレビを付け、何気なく眺めていると再放送なのか、この時間帯の番組なのか分からないが、大家族の話がやっていて―――
赤ん坊ができた事を他の家族に知らせるというシーンがあり、思わず見入ってしまった。
―――私もそろそろ言わなきゃいけない時期なんだよなぁ……。
少しずつ膨らんでいくお腹。
子供達には少し太った、と言えば家の中で動いているのであまり不振がられなかったが、そのまま言わずにいるわけにはいかない。
動けなくなれば二人は不審に思うだろうし、大きくなり過ぎれば[ママ、どうしたの?]と疑問に思うだろう。
まあ旦那に似て勘が鋭い所があるので、もしかしたら既に知っている可能性も0とは言えないが。
「……ねえ、俺の事を無視しないでほしいんだけど」
『え?何か言った?』
テレビを見ながらそんな事を考えているといつもの特等席でコーヒーを飲んでいた旦那がそう言いながらコーヒーカップを持って私の隣に腰掛けた。
―――何にも聞いてなかった……。
「……。……そんなに真剣にテレビを見て、どうしたの?って聞いたんだよ」
『あ、そうなんだ、ごめんね。ちょっと色々考えてたから……』
「テレビを見ながら考え事?……。……何となく解ったけど、そこまで集中するような事でもないと思うんだけどなぁ」
『そんなに根に持たないでよ……。そりゃあ別に隠したいほどの事じゃないし、時間が経てばバレちゃう事なんだし……でも、なかなかタイミングがなぁ、みたいなさ』
「へえ?それで?」
『それで?って言われても……』
無視されたのがそんなに気に食わないのか、それとももっと別の理由があるのか解らないが、相手―――折原臨也の機嫌はいまいちだ。
別に無視しようと思って無視したわけではないのだが、まあ相手が[無視をした]と思ったらそれは完全にそういう事になってしまうのだろう。
「そのままの意味だけど?いつ子供達に話すんだい?」
『……やっぱり怒ってる?』
「さあね」
そう言いながらニコリと笑う臨也。
こういう時の彼は口だけなのでそこまで気にしていない、という事なのだろう。それなら良かった―――と思いつつ、臨也に言われた言葉について考えた。
自分のお腹を見れば、見る人が見ればすぐに解るぐらいになっており、そろそろ太った、だけでは通用しなくなってきそうだ。
―――言うなら、すぐに話した方がいいよね……。
『……うん、そうだね。今日……きちんと話すよ』
「そう。こういうのは君と子供達の問題でもあるから、俺は何も言わないよ。
君のタイミングで話せばいいと思うし、言いたくないのであればそれでもいいと思ってる。……まあそれじゃあバレない筈がないけどね」
『あはは、まあね。……そう言いながら臨也は手伝ってくれるんでしょ?前みたいに』
まだ子供達が小さい時―――私の過去についてほんの少しだけ触れた時も臨也は手伝うように、寄り添うように傍にいてくれた。
勇気がなかった私、こんな事なければ良かったのに―――そんな思いがあったが、それでも隣に臨也がいてくれたからこそ、ほんの少しでも過去を子供達に話す事ができた。